トランプ関税の交渉カード「コメの輸入枠拡大」が日本の農業を潰すワケ
だが、輸入枠のさらなる拡大による弊害を、農家は危惧しているという。
■5キロ3000円が生命線
「現在、輸送コストなどの経費込みで米国産米の店頭価格は5キロ3000円程度。円高になれば、さらに下がることになります。仮に77万トンのMAを90万トンほどに増やした場合、供給が増えて相場が下がるので、短期的にはいいように思われます。しかし、一度広げた枠は元に戻せなくなるため、消費量が減退すれば、農家に与える打撃は甚大です」(常本泰志氏)
日本の農家はコスト面から、最低でも店頭価格5キロ3000円以上で販売できないと食べていけないという。
「現在の稲作従事者の平均年齢は69歳で、生産コストが上がり、後継者が現れず離農が進む中、食料安全保障の観点のほか、若手が進んで稲作に従事しようとする機運をつくるためにも、輸入米に頼ってはいけない局面なのは明らかです」(常本泰志氏)
MA米は非関税とされているが、実際はマークアップと言って卸売価格と販売価格の差額が1キロあたり最大292円ほど発生し、民間輸入の際にかかる関税との差は50円程度だ。無理に輸入枠を拡大させるより市場原理に任せるほうが、将来の食料自給に与える打撃は小さいと常本氏は話す。