お気に入りのブランドへの愛情が崩れる瞬間…パッケージが左右するコーラとペプシの評価

公開日: 更新日:

事実に基づいた説得力のあるレンズを通して製品やサービスを提示する方法

 2019年、私はある大手グローバルB2B企業にアドバイスをした──「セールスパーソン」という肩書きや「セールス」という用語を使うのをやめ、代わりに「パートナーシップ」チームとしてはどうか。すると、メールの返信が増えて、売上は31%増加した。私の予想どおり、「セールス」という言葉を含んだ肩書きは、コンタクトを取る相手に、欲しくないものをしつこく売りつける印象を与える。逆に「パートナー」という言葉のフレームは、仲間意識を生み出すのに効果的だ。

 数年前、イーロン・マスクは動物愛護団体に対して「テスラの車から革素材を排除する」と約束した。そして約束どおり、モデル3以降、内装には「ヴィーガン・レザー」と呼ばれる素材が使用されるようになった。

「心理的ムーンショット」という用語を考案した伝説の広告人、ローリー・サザーランドに言わせると、テスラは心理的ムーンショットが価値認識に与える強力な影響を本能的に理解している。新たな車のシートを「プラスチック」とは言わず(実際にはプラスチック)、内装の価値認識を維持するために、高級感を感じさせる「レザー」という語にこだわったのだ。こうしたフレーミングは、製品やサービスそのものを変えずに心理的ムーンショットを達成する常套手段である。

 フレーミングは嘘やごまかしではない。事実に基づいた説得力のあるレンズを通して製品やサービスを提示する方法だ。

 たとえば、ある食品について、脂肪分が10%含まれていると説明するよりも、「赤身90%」というほうが印象がいい。どちらも事実だが、一方のフレームのほうが魅力的に感じる。

 これはブランディング、マーケティング、ビジネスにおいて重要な原則だが、あいにく見落とされることが多い──すなわち、現実は単なるイメージにすぎず、状況や文脈こそが王様なのだ。

◼️法則 写真よりフレーム

 言葉にしたことだけが伝わるわけではない。メッセージ、商品、サービスが置かれている状況によって、受け取られ方は異なる。フレームを変えればメッセージは変わる。顧客は、あなたが言わなかったことも含めてすべてを受け取る。だから言葉だけではなく、言いたいことを表現する方法に焦点を合わせ、それによってポジティブな印象を与えるのか、それともネガティブな印象を与えるのかを考えないといけない。

[センスのあるフレームで凡庸さが変わる。]

  ◇  ◇  ◇

【著者】スティーブン・バートレット(Steven Bartlett)
 イギリスの起業家。40以上の会社に投資し、講演、執筆、コンテンツクリエーターとして活躍。ヨーロッパでランキング第1位のポッドキャスト『The Diary Of A CEO』のホストを務める。弱冠22歳で世界的なデジタルマーケティング会社〈Social Chain〉を設立し、5年後に株式上場。サンフランシスコのソフトウェア会社〈Thirdweb〉、革新的なマーケティング会社〈Flight Story〉を共同設立し、その業績が『フォーブス』『ビジネスインサイダー』『フィナンシャル・タイムズ』『ガーディアン』などに取り上げられる。スマートフォン向けアプリ「FT Edit」のゲスト編集者を務め、『フォーブス』の「30歳未満の特筆すべき30人」に選出。BBCの『Dragon's Den』(イギリス版『¥マネーの虎』)に最年少で出演。国連、SXSW(世界最大級のビジネスカンファレンス)、TEDxLondon、VTEXデー(電商取引に関する国際イベント)でバラク・オバマとともに登壇。初めての著書『Happy Sexy Millionaire』に続いて、本書『THE DIARY OF A CEO』も発売直後にサンデー・タイムズ紙のベストセラーリスト第1位に輝き、世界累計でミリオンセラーとなる。

【翻訳者】清水由貴子(しみず・ゆきこ)
 英語翻訳者。上智大学外国語学部卒。おもな訳書にアレッサンドロ・マルツォ・マーニョ『初めて書籍を作った男 アルド・マヌーツィオの生涯』(柏書房)、ライアン・ジェイコブズ『トリュフの真相 世界で最も高価なキノコ物語』(パンローリング)、ニール・ヤング『ニール・ヤング 回想』(河出書房新社)、マイケル・シュア『How to Be Perfect 完璧な人間になる方法?』(かんき出版)などがある。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人・田中将大「巨大不良債権化」という現実…阿部監督の“ちぐはぐ指令”に二軍首脳陣から大ヒンシュク

  2. 2

    ヘイトスピーチの見本市と化した参院選の異様…横行する排外主義にアムネスティが警鐘

  3. 3

    国民民主党「新人都議」に渦巻く“スピリチュアル疑惑”…またも露呈した候補者選定のユルユルぶり

  4. 4

    巨人・田中将大を復活させる「使い方」…先発ローテの6番目、若手と併用なんてもってのほか

  5. 5

    「時代に挑んだ男」加納典明(25)中学2年で初体験、行為を終えて感じたのは腹立ちと嫌悪だった

  1. 6

    高橋真麻がフジ港浩一前社長、大多亮元専務を擁護の赤っ恥…容姿端麗な女性集めた“港会”の実態知らず?

  2. 7

    参院選「自民裏金議員15人」で当確5人だけの衝撃情勢…比例は組織票があっても狭き門

  3. 8

    ドジャースが欲しがる投手・大谷翔平の「ケツ拭き要員」…リリーフ陣の負担量はメジャー最悪

  4. 9

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  5. 10

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?