著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

五輪マラソンの札幌移転 IOCが「高飛車」だった歴史的背景

公開日: 更新日:

 現在はボクシングやNBAが行われるマジソン・スクエア・ガーデンは徒歩競走の会場で、海を渡ってイギリスでも行われた。ボストンマラソンで2度優勝した日本女性、ゴーマン美智子はデビュー大会で1周150メートルの室内トラックを21時間で1076周している。

■持久力を着そう賭け

 ブームは19世紀末に台頭したメジャーリーグとアテネ五輪でのマラソン登場で下火になり、ルールを洗いながら競歩として発展した。

 徒歩競走は距離=持久力を競う賭けだった。そして労働者階級の出自だった点でもマラソンは陸上競技のアマチュアリズムと一線を画した。今回にしろ、IOC以前に国際陸連そのものにマラソンに馴染まない側面があり、廃止論も決して消えてはいない。マラソンの記録を公認するのはつい2004年のことだ。こうした流れが日本のマラソンと相いれない……。

 金栗四三の功績はもっぱら戦後で、戦前はほぼ無視された。主宰する全国マラソン連盟が〈世界躍進〉を旗印にボストンに選手を派遣。1951年の田中茂樹を皮切りに山田敬蔵、浜村秀雄が次々に勝って敗戦からの復興に活力を与えた。その後も重松森雄、君原健二、采谷義秋……。ボストンマラソンの当時の参加者は200人足らずだったが、日本にとってマラソンは、世界への懸け橋であり、賭けではなかった――この温度差が高飛車という印象に結びつくのではないか。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態