著者のコラム一覧
後藤逸郎ジャーナリスト

1965年生まれ。毎日新聞大阪経済部次長、東京本社特別報道グループ編集委員などを経て現職。著書に「オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側」(文春新書)。

「多額の税金を投入するのだから五輪は開催すべき」は暴論

公開日: 更新日:

 新型コロナ禍で政府や組織委が国民に示すべき情報は、オリンピック開催に伴う感染リスクの高低だ。開催すると感染がどこまで広がり中止した時よりも感染者や死者が何人増えるのか。一人も死者を出さないために中止するか、1000人単位の犠牲者を容認して開催するか。何人だったら容認できないのか。立場の違いはあれ、極めて重い判断を求められるが、決めるのはあくまで国民だ。

 経済波及効果の増減も、オリンピック開催の根拠には不十分だ。

 延期、中止、無観客開催、通常開催などの経済波及効果を研究機関などが試算している。都が試算した「32兆円の経済波及効果」を引き合いに開催を主張する与党の国会議員もいる。しかし大半の経済波及効果は、すでに競技場建設などで実現している。中止すれば巨額の損失が発生するかのような主張は誤りだ。

 しかも、これらの経済波及効果は、中止や開催した時の新型コロナ感染者や医療費の増減など社会的損失を含んでいない。開催で「人流」が増えれば、感染者も医療費も増えるし、死者が出れば生命保険金が支払われる。これも経済波及効果だから開催すべきとはならない。

 中止を日本側から言い出すと違約金が発生するとの俗説も誤りだ。国際オリンピック委員会(IOC)と都が結んだ開催都市契約に、「申告者負担の規定はない」(組織委)。開催か中止かは、新型コロナ感染防止の観点から国民が決めることなのだ。 =つづく

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