横綱白鵬「最後の土俵」か照ノ富士「綱とり」か…名古屋場所はモンゴル人力士“世代闘争”最終決戦

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 これが最後の土俵となりそうだ。

 4日初日の大相撲7月場所。今年3月場所以来の出場となるのが横綱白鵬(36)だ。1日には師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)が「出ますよ」と明言。3月にメスを入れた右ヒザについても「本人は『痛みはない。調子がいい』と話している。前の体に戻ってきた」と話した。

 白鵬は途中休場を含め、6場所連続休場中。昨年11月場所を休んだ際は横綱審議委員会から、引退勧告の次に重い「注意」を受けた。今年1月場所はコロナに感染したことが影響したとはいえ、3月場所も途中休場。すわ引退かと思われたが、「手術をして7月場所に進退を懸ける」と、勝手に5月場所の休場まで決めてしまった。

 そんな経緯があるだけに、白鵬は横審だけではなく角界からも厳しい視線を向けられている。伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)も「出るからには横綱としての責任感を持って、最後まで頑張ってほしい」と発言。一見エールのようでその実、「途中で休むな」という苦言だ。

 もちろん、7月場所を完走してそれなりの成績なら誰も現役続行に文句を言えない。それを手術明けの白鵬ができるかどうか。となればやはり、今場所限りの引退が現実味を帯びてくる。

■白鵬の野望は協会理事長

 白鵬はすでに日本国籍を取得しており、引退後は親方になれる。ゆくゆくは理事から日本相撲協会の理事長に……という野望を持っているといわれている。理事の互選で決まる理事長はともかく、理事職自体は理事選の投票次第。資金力がモノを言うところもあるが、同郷のモンゴルをはじめとした外国出身親方の数が増えれば、理事就任の足掛かりになる。理事になった暁には外国人枠の撤廃などの制度改革を訴える意向があるだけでなく、外国人力士の取りまとめ役も担うつもりだという。

 しかし、親方のひとりは「そううまくいくとは……」とこう続ける。

「現在、外国出身親方は6人。特にモンゴル出身の親方は今後も増えるでしょう。ただし、その全てが白鵬に従うかどうかは話が別です。白鵬は人望がないとまでは言わないが、後輩のモンゴル人力士たちとの間には意識のズレがある。2017年に同郷の日馬富士が起こした事件を思い出してください」

照ノ富士は「第3世代の雄」

 くだんの事件は白鵬と日馬富士の両横綱が後輩の貴ノ岩を呼び出し、説教。日馬富士が貴ノ岩を殴り、引退に追い込まれた。その場に居合わせた照ノ富士(29)も説教を食らい、「何かあるか」と言われると「何も言えません。壁があるんで」と返答に窮したという。

「壁というのは地位の差以外にも、モンゴル人力士の世代間格差が根底にある。モンゴル人力士第1号の旭鷲山や旭天鵬(現友綱親方)、第2世代の白鵬や日馬富士らは、それこそいきなり日本に渡り、辛酸をなめて這い上がった。彼らが出世して道をつくったおかげで、相撲界では一躍モンゴル人力士が人気に。鳥取城北高(鳥取)を筆頭に、希望が丘高(福岡)、飛龍高(静岡)など留学生として迎える高校も出てきた。ただ、彼らの入門ルートはさまざまで、白鵬らが『俺らの頃は……』と苦言を呈しても、下の世代には実感がないので響かない。貴ノ岩は飲み屋で『これからはオレたちの時代だ』と言ったそうだが、彼らの世代の偽らざる本音でしょう。今後モンゴル出身親方が増えたとしても、白鵬に唯々諾々と従うとは思えない」(前出の親方)

■白鵬には恨み骨髄

 そもそも、モンゴル人力士の団結力というのも昔のように確固たるものではない。第2世代の白馬(元小結)はかつて本紙の取材に、「駆け出し時代、稽古が終わってから両国の公園に集まり、日々の苦労や言葉の通じないつらさを語り合っていた」と話していた。そうした経験が第3世代にはない。白鵬とすれば、俺たちが土台をつくったという意識もあるのかもしれないが、それを小うるさいと受け取るモンゴル出身者もゼロではない。彼らに強く出れば出るほど、むしろ反発を食らいかねないというのだ。

 その時に頼りにされるのが第3世代の出世頭である照ノ富士ではないか。両ヒザのケガと病気で大関から序二段まで陥落したが、不屈の闘志で大関に再昇進。今場所は綱とりがかかる。鳥取城北高への留学経験もあり、第3世代を象徴する力士だ。

 こちらも日本国籍取得を目指しており、将来は親方になることが確実。横綱に昇進すればハクもつく。日馬富士事件の際はヒザが悪いのに正座を強要されるなど、白鵬には恨み骨髄だという。「第3世代の雄」である照ノ富士が、白鵬の「野望」に待ったをかけるかもしれない。

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