カーリング女子「銀」の“お値段”…ご褒美は報奨金200万円と米&乳製品という厳しい現実

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 第9エンドで2点を奪われると、日本代表のロコ・ソラーレ(LS)は最終エンドを前に負けを認める「コンシード」を宣言した。有利な後攻だった第5エンドで1点のスチールを許し、第7エンドで致命的な4失点。主導権を奪えないまま、LSの五輪は終わった。

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■2大会連続の躍進でも…

「こんなに悔しい表彰式ってあるんだ、って感じました。納得がいく試合ができなかった悔しさ、もっともっとできた悔しさ、隣で英国のチームが金メダルをかけているのを見て、ああやっぱり悔しいって」

 司令塔のスキップ、藤沢五月(30)は短いミックスゾーンでの取材で7度も「悔しい」と繰り返した。カーリング史上初のメダル獲得となった4年前の平昌大会に続く2大会連続の表彰台。メダルの色は銀に“昇格”したが、初の決勝進出で世界の頂点に立つ資格を得ていただけに、試合直後は涙が止まらなかった。

■JOCは「北京のMVP」と大喜び

「JOC(日本オリンピック委員会)内からは、『北京のMVPはカーリング』という声が出ています。テレビ視聴率では花形競技のフィギュアスケートを上回る数字を叩き出した。坂本花織が銅メダル、ワリエワ騒動もあって注目された女子シングルのフリーは、午後7時からの中継で世帯平均視聴率が19.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区=以下同)。対して、女子カーリングの1次リーグの米国戦は同じ19.0%。予選、かつ、NHK総合で中継が始まったのがフィギュアより遅い時間帯の夜10時からということを考えれば、フィギュア以上の注目を集めていたと言っていいと思います」(テレビ局関係者)

 平昌五輪で全国的の知名度を得たLSの面々は今回の北京五輪でも大きな注目と期待に応えたわけだが、だからといってチームを取り巻く競技環境が劇的に好転したわけではない。

 チームの創設者で、一般社団法人ロコ・ソラーレの代表理事を務める平昌五輪銅メダリストの本橋麻里氏が自身の著書、「0から1をつくる 地元で見つけた、世界での勝ち方」(講談社現代新書)で<五輪のメダリストと呼ばれるようになりましたが、ちょっとちやほやされても、1年も経てば普通の人になります>と記しているように、ブームが起きても一過性で長続きはしない。

 どんなに全国的になっても、競技だけで飯を食える環境には程遠いのが実情。チーム一の人気を誇る藤沢は保険代理店の「コンサルトジャパン」、サードの吉田知那美(30)は自動車販売の「ネッツトヨタ北見」、リードの吉田夕梨花(28)は「医療法人社団 美久会」、セカンドの鈴木夕湖(30)は「北見石油販売」、リザーブの石崎琴美(43)は「松田整形外科記念病院」に勤め、競技との二足のわらじを履いている。

 今五輪でスピードスケート女子1000メートルなど計4つのメダルを獲得した高木美帆(27)に、冬季日本人選手で史上最高額となる総額2200万円の報奨金がJOCと日本スケート連盟から支給されると話題になっているが、LSにはJOCから銀メダリストに出る1人200万円のみ。日本カーリング協会の規定に報奨金はない。

■強化費はスキーの4分の1以下

「LSが平昌五輪で史上初のメダルを獲得した際に、日本カーリング協会の幹部が報奨金に関して『お金がないので、ない袖は振れない』と発言したことが話題になった。令和2年度の協会の決算報告書によれば、JOCからの『交付金』と『強化NF事業補助金』を合わせて約6940万円にとどまるが、例えば実績の高い日本スキー連盟は合わせて約2億8940万円と4倍以上のお金を手にしている。日本スケート連盟も計1億5850万円です。資金不足のカーリング協会は平昌五輪前に代表チームの強化費をクラウドファンディングで募ったものの、300万円の目標金額に対してわずか3万9300円しか集まらなかったと話題になり、かえってマイナースポーツの厳しい現実を突き付けられることになりました」(スポーツライター)

賞金大会も凱旋大会もコロナで中止

 LSには現在、18社のスポンサーがついているものの、先の本橋氏の著書によれば、<決して小さい額ではない、チーム運営強化費が必要になります。場所や期間によりますが、たとえば3週間、5人でカナダ遠征をするなら合計で200万円前後でしょうか>という資金がかかる。

 潤沢ではない運営費をつかって海外の賞金大会に出ても、カーリング大会の優勝賞金は多くても200万円ほど。貴重な収入源となるそんな大会ですら、このコロナ禍で軒並み中止になった。

 北京五輪後の“凱旋大会”になるはずだった、3月1日からの日本混合ダブルス選手権も藤沢らが出場予定だったが、感染拡大で中止が発表された。

 銀メダルを手にしたLSには、カーリング女子日本代表のオフィシャルスポンサーである全農から米100俵(約6000キロ)とメンバーにそれぞれ乳製品1年分が贈呈されるというが、他競技に比べれば、とてもじゃないが十分なメダルの対価とは言えない。

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