著者のコラム一覧
Ricardo Setyonジャーナリスト

リカルド・セティオン 1963年生まれ。サンパウロ出身。中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材。スポーツジャーナリストに転身し、8カ国語を操りながらブラジルメディア以外にも英「ワールドサッカー」、伊「グエリン・スポルティーボ」など幅広く執筆。BBCのラジオ番組にも出演。98年、02年のW杯期間中にブラジル代表付き広報を務めた。現在もジーコ、ロナウド、ロナウジーニョ、カフー、ドゥンガら大物との親交も厚い。13年コンフェデレーションズカップではFIFA審判団の広報。国内では「ワールドサッカーダイジェスト」「スポルティーバ」などでコラムを執筆中。ブラジルのマッケンジー大、パナマのパナマ大、イスラエルのハイファ大などでスポーツマネージメントの講義を行う。自他ともに認める「サッカークレージー」。

ペレは戦争を2度止めた! 70年代“サッカーの王様”はコーラの次に有名な名前

公開日: 更新日:

 昨年12月29日に82歳で死去した「サッカーの王様」ペレのひつぎが3日にサンパウロ州サントスの墓地に埋葬された。

 ブラジルは大きな悲しみのうちに新年を迎えた。ペレのひつぎはサントスのスタジアムに安置され、24時間ほど人々の弔問を受けた後、消防車に乗せられて約5時間、思い出深いサントスの町を巡った。

 なぜ消防車? って思うかもしれないけど、ブラジルでは崇高な乗り物とされる。だからF1レーサーのセナが亡くなった時も、ブラジルがW杯で優勝した時も、選手たちは消防車に乗ってパレードしたんだ。

(文=リカルド・セティオン、通訳=利根川晶子)

 ◇  ◇  ◇

 近代サッカーに始まりがあるとしたら、それは1958年のスウェーデンW杯だとボクは思う。初めてFIFAが本格的に運営して初めてテレビ中継され、サッカーが一気に世界に広まった大会。そこで最初に生まれた英雄が17歳のペレだった。

 もちろんSNSもインターネットもない時代だったけど、ペレの名前は世界の隅々まで知れ渡った。70年代のある調査では「ペレ」は「コカ・コーラ」の次に有名な名前だって結果も出ている。「ローマ教皇」や「イエス・キリスト」よりも上だったんだ。

 アメリカのレーガン大統領はペレに初めて会った時、丁寧に自己紹介をしたけど、今度はペレが名乗ろうとすると、それを制止してこう言った。

「あなたは名乗る必要はありませんよ」

 ペレの影響力の大きさが戦争を2度、止めたことがある。皆さんは知っているよね?

 ペレが所属するサントスが69年、海外ツアーを行って資金稼ぎをしようとアフリカに遠征した。訪れたコンゴもナイジェリアも紛争の真っただ中。でも、敵対するリーダー同士が「サントスが試合をする数日間だけは戦闘を止めること」で合意。もちろんペレが見たいからだ。ペレのおかげで人々は束の間の平和と王様のプレーを楽しむことができたんだ。

 よく「ペレとマラドーナはどっちが上か」とか「ペレかネイマールか」なんて議論をするけど、はっきり言ってナンセンスだね。ペレの時代のサッカーは今とはまるで違った。例えば現役時代のボールの重さは、試合前でも1.3キロはあり、試合後には泥と水分を吸って2キロに増え、雨の日には3キロにもなったという。カタールW杯の公式球アル・リフラは433グラムだ。

 ボールだけじゃない。ネイマールが履いているプーマの最新シューズは片方で225グラムだけど、ペレの時代は重い牛革で1.2キロ。おまけに木製のスタッドはクギで打ち付けられ、それが試合中、足の裏に当たることもあったらしい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?