青沼陽一郎
著者のコラム一覧
青沼陽一郎

作家・ジャーナリスト。1968年、長野県生まれ。犯罪事件、社会事象などをテーマに、精力的にルポルタージュ作品を発表。著書に「食料植民地ニッポン」「オウム裁判傍笑記」「私が見た21の死刑判決」など。

安倍首相の“問題発言”で解く民主主義とは

公開日: 更新日:

「安倍でもわかる政治思想入門」適菜収著 KKベストセラーズ 1300円+税

 この本のタイトルにある“安倍”とは、現職の安倍晋三内閣総理大臣のことである。

 書店販売では、どこで撮ったものなのか、お花畑でにこやかに立つ安倍晋三の写真の帯が付いているのですぐにそれとわかるのだが、要は、その図柄のとおり“お花畑”にいるとしか思えない現職の首相のとんちんかんな発言を取り上げて、痛烈な批判を加える著作である。

 例えば、今年5月16日の国会答弁。

「議会の運営について少し勉強していただいたほうがいい。議会については、私は『立法府の長』」

 義務教育を受けた者ならわかるように、三権分立における「立法府の長」は衆参両院議長であって、首相は「行政府の長」である。

 あるいは、今年1月4日の年頭記者会見でのこの発言。

「デフレではないという状況をつくり出すことができたが、デフレ脱却というところまできていないのも事実」

 いったいなにを言いたいのか、よくわからない。

 こうした問題発言を列挙しながら、著者特有の言い回しで「バカ」「アホ」「イカレポンチ」と辛辣な論評を加えていく。と同時に、民主主義とはなにか、保守とはなにかを、政治思想、哲学から、それこそ“サル”でもわかるように読み解く。一読すると、問題発言に笑ってばかりはいられない、日本の置かれた政治状況が少しずつ恐ろしくなる。

 その解説の中に、三島由紀夫が自決の直前に語った「檄」からの引用があった。

「政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を涜してゆくのを、歯噛みしながら見ていなければならなかった」

 安倍晋三は、TPPを「国家百年の計」と豪語していた。トランプ次期大統領の誕生でそれも絶望的である。

 三島が看破していたように、そして本書で著者が言うように、現職首相のしていることは、米国の要望どおりに国の形を変えていく、「戦後レジーム」の固定化である。安倍を「保守」と見立てること自体が間違っている。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本人の「知性低下」を露呈した東京五輪…政治家も官僚も私利私欲に走る

  2. 2

    実は計算づくだった? 石橋貴明と鈴木保奈美の「離婚発表」が7月になったワケ

  3. 3

    菅首相の五輪強行がトドメか?衆院選まさかの「自公過半数割れ」に現実味

  4. 4

    安倍前首相の五輪開会式トンズラ…「逃げた」「無責任の極み」と大ブーイング

  5. 5

    小山田圭吾“陰湿いじめの舞台“となった和光学園の「共同教育」とは…担当者に聞いた

  6. 6

    五輪開会式直前に演出の小林賢太郎氏が解任…やはり抜擢は“クリエイターの天皇”人脈だった

  7. 7

    東京五輪にスポンサーから続々NO! TV観戦増でCM効果上昇のはずが放映中止ドミノの可能性

  8. 8

    小林賢太郎氏は開会式演出をクビに…“もうひとりの太郎”麻生財務大臣「ナチス肯定発言」の責任は?

  9. 9

    競泳・池江璃花子ついに400mリレー登場も…「五輪出場は運命」発言“炎上”のナゼ

  10. 10

    福山雅治が9年ぶり「ガリレオ」シリーズに意気込む カリスマ復活なるか?

もっと見る

人気キーワード