著者のコラム一覧
飯田哲也環境エネルギー政策研究所所長

環境エネルギー政策研究所所長。1959年、山口県生まれ。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。脱原発を訴え全国で運動を展開中。「エネルギー進化論」ほか著書多数。

本当に重大なことは議題にしない日本の政治文化

公開日: 更新日:

「参加と交渉の政治学」本田宏著 法政大学出版局 2600円+税

 ドイツと日本は、人口や経済規模、産業構造、歴史など多くの点で似ており、しばしば比較される。そのドイツは脱原発したのに、なぜ日本にはできないか。誰もが思う疑問だ。本書はその「回答」の一つかもしれない。

 ドイツの裁判所が初めて原発建設を止めたのは1975年だが、日本では2014年の関西電力大飯原発の再稼働差し止め判決が最初だ。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度はドイツの10年遅れだったが、司法はなんと40年遅れだ。

 メディアも、ドイツでは権力と厳しく対峙してきたが、日本では記者クラブで飼い慣らされ、広告宣伝費で釣られ、原子力ムラの一角を占めてきた。

 反原発運動も、ドイツでは緑の党を生み、新しいシンクタンクを生み、原子力安全委員長さえ生むなど社会の中で昇華されていったが、日本ではずっと異端視されつづけた。3.11後は多数派になったのに、安倍政権下では再び「異端」へと追いやられつつある。

 3.11後にメルケル首相が立ち上げた倫理委員会は注目されたが、さかのぼれば1975年に市民対話という歴史がある。ドイツでは原発導入の初期からきちんと政治の議題として取り上げ、法治のもとで重層的な「参加と交渉」を重ねてきた。考えて見れば、民主主義では当たり前のことだ。

 他方、日本では、原発は政治の議題からずっと外されてきた。本当に重大なことは議題にしない政治文化の日本では、原発はあまりに政治的すぎたからだ。市民参加や対話もごく一部に限られ、ほとんどはセレモニーに過ぎなかった。

 しかし3.11後の日本では、原発を巡る「政治的な難題」が私たちの目の前におびただしく広がっており、目をそらしようがない。こうした難題に対して、「お任せ政治」や「観客民主主義」に陥らず、私たち一人ひとりが向き合い参加し発言し行動しなければ、「ドイツとの時差」はますます広がってゆくに違いない。

 著者が指摘するとおり、「原発事故によって民主主義の質が問われ」ているのだ。

【連載】明日を拓くエネルギー読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • BOOKSのアクセスランキング

  1. 1

    「最後の幕臣 小栗忠順 挫けども、折れず」増田晶文氏 非業の運命をたどった“ラスト・サムライ”の生涯を描いた1冊

  2. 2

    タイムトラベル専門書店 utouto(板橋・志村坂上)古い門をくぐった先に現れる築110年の蔵を改装した店舗

  3. 3

    「人手不足」なのに仕事探しに四苦八苦「年金だけじゃ生活できない!『定年バイト』奮戦記」林山翔平著

  4. 4

    「芝浦屠場千夜一夜」山脇史子氏

  5. 5

    「新しい戦中」に突き進んでいかないためにはどうしたらいいのか──「一寸先は闇」五木寛之、佐藤優著

  1. 6

    茨木のり子にいわさきちひろ…それぞれの生き方を貫いた女性たちが建てた家「女性が建てた家と間取り」田中厚子、松下希和著

  2. 7

    失敗にめげずニコニコの精神が成長の原動力に「発達障害の私だからこそ、成功できた」似鳥昭雄著/祥伝社(選者:稲垣えみ子)

  3. 8

    連載12352回 座右の書は新聞コラム <5>

  4. 9

    竹内薫(サイエンス作家)鈴木光司さん、またいつか宇宙と時空の神秘を語り合おう

  5. 10

    状況が変わってきた自転車をめぐる混乱を研究者が解説「『自転車』はどこに向かうのか」疋田智著

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人・橋上秀樹監督代行とは何者か…原辰徳氏には干され、阿部監督が心酔した“野村ID野球”の継承者

  2. 2

    (3)巨人の次期監督は誰か…松井秀喜氏、桑田真澄氏より“現実味”帯びる原辰徳氏の4度目登板

  3. 3

    (1)阿部監督の暴行事件は巨人にとって“渡りに船”だったか…異様に早い「解任判断」の裏側

  4. 4

    ゾンビたばこ羽月隆太郎「共犯者暴露」の大きすぎる波紋…広島・新井監督の進退問題にまで飛び火か

  5. 5

    (2)阿部監督「長女の手紙」で潮目一変…巨人が“事件矮小化”を手引きしたのか

  1. 6

    高市首相「中傷動画」疑惑に逆ギレ答弁連発 質問した野党議員の制止振り切り“ご飯論法”で一気まくしたて

  2. 7

    絶好調!巨人・阿部慎之助を支える最強あげまんグラドル小泉麻耶

  3. 8

    ゾンビたばこ羽月隆太郎が涙の激白 広島内で「関与は6人」「壮絶イジメ」「裏切り」【会見全文】

  4. 9

    維新はシャカリキでも産業界は「ノーモア都構想」…企業がごっそり“脱・大阪”前年度比1.8倍増

  5. 10

    広島羽月 お立ち台で見せた初々しい“坊主頭”の意外な理由