「新型コロナ 自宅療養完全マニュアル」岡田晴恵著/実業之日本社

公開日: 更新日:

 私は、テレビやラジオで何人も感染症の専門家に会うが、一番信用しているのは、岡田晴恵教授だ。言っていることが科学的だし、何よりこれまで未来をピタリと言い当ててきているからだ。

 11月14日にテレビ局で会ったときも、「もう手遅れで、感染爆発に至る可能性が高い」と、感染第3波の拡大を予見していた。その2週間後、「やはり爆発的に拡大しましたね」と私が言うと、「私、本を書いたんです」と言った。その手には本書が握られており、私はすぐ、何が言いたいのか分かった。

 医療現場が悲鳴を上げ、専門家が感染拡大防止のための行動規制を求めるなかでも、政府は応じない。それどころか、来年6月までGo To トラベルの延長を決めた。このままでは、コロナ患者が病院からあふれ、自宅療養に追い込まれる。それを予見して本書を書いたのだ。

 本書は、一般読者向けに書かれており、2色刷りで、図解が多く、話が具体的だから、非常に分かりやすい。ただ、中身は本格派で、新型コロナとは何か、新型コロナに感染しないために何をすればよいかなどを、丁寧に述べている。しかし、私が背筋の寒くなる思いをしたのは、家族が感染したときの対策だ。医療崩壊して、自宅療養を余儀なくされたら、感染者の看護は、家族がしなければならない。

 家族は大変だ。感染者が悪寒を持ったら体を温め、熱が出たら冷やす。食欲がなくても食べられる食品を用意する。そして、2次感染防止のために、マスクやゴーグル、ビニール袋を用意するとともに、重症度を判定するためにパルスオキシメーターも準備したほうがよいという。

 そして朝昼晩と、熱や症状、食事の内容などをきちんと記録する経過記録表をつけなければならない。要は、病院で看護師さんがやっていることを家族がやらなければならなくなるのだ。

 本書が指摘する必要事項を見ていくと、病院が受け入れてくれなければ、家族のなかに1人感染者を出しただけで、暮らしは激変してしまう。

 私は、普段、読んだ本は処分してしまうのだが、この本はしばらく取っておこうと思う。十分注意していても、いつ感染するか分からないからだ。 ★★★(選者・森永卓郎)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾