デジタル中国の鼻息

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「チャイナテック」趙瑋琳著

 いまやアメリカを追い抜き、西洋型民主主義も否定して鼻息荒い中国。その背景がデジタル産業の躍進だ。



 2010年、既にGDPで世界第2位の大国となった中国。しかし大量投資と輸出主導の経済には陰りが。そこで新しい躍進力となったのがデジタル産業だ。これによって「量の成長」から「質の成長」へと転換したのだ。

 それを支えるのがデジタル技術の社会実装。要は14億に届く世界最大の人口が朝から晩まで中国製アプリを使いこなし、仕事や買い物から娯楽まで、すべての面にデジタルを埋め込むことで驚異的な発展をとげたのだ。いまやスマホ1台で時間にも距離にもしばられない生活が満喫できると著者は言う。コロナ禍でもマスクをしたままの通行人の体温を自動で測定できるなど、世界を驚かせた技術はそんな蓄積の上にあるのだ。

 中国出身で東工大に学んだ伊藤忠総研アナリストの著者は中国デジノミー(デジタルエコノミー)急進展の背景からデジタル人民元、5G技術、アリババグループの実像などのほか、監視社会や市場独占など負の部分までを広く解説。

 さらに中国テック企業の日本進出や日中企業連携の状況分析までを報告する。

(東洋経済新報社 1870円)

「チャイナ・イノベーション2」李智慧著

 米誌「フォーチュン」の企業500社番付で129社を記録した中国。121社にとどまった米国をついに追い抜いたと話題になったのが2019年のこと。いまコロナからの回復もめざましく躍進を続けている。

 野村総研上級コンサルタントの著者によると、中国のデジタル強国戦略は1979年の改革開放から。このとき国務院はすぐにコンピューターの技術開発と人材育成に着手。以来、6段階で今日のデジタル強国をつくり上げた。

 一方、最近ではジャック・マー率いるアリババグループ傘下のアントグループへの締め付けなども強めた。著者はその理由を冷静に分析、与信残高32兆円と日本の地銀をはるかにしのぐ額にまで拡大したアントへ、リスクを懸念した当局が規制をかけつつあるとみる。

 本格的な分析と議論のための資料として有益だろう。

(日経BP 2420円)

「中国オンラインビジネスモデル図鑑」王沁著

 アメリカ政界の対中警戒論をよそに一般人はみなティックトックに夢中。本書は慶大留学中に起業し、リクルートホールディングスを経て若手実業家となった著者による中国製人気アプリの解説。

 ツイッターを禁止した中国で人気の微博(ウェイボー)、老舗チャットサービスのQQ、ユーザー同士の位置情報の共有や有名人の招待イベントなどで伸びたマッチングアプリMOMO、そしていまや世界中で大受けのティックトックなどが、図解とわかりやすい短文の紹介でずらりと60個並ぶ。

 対中ビジネスを考える読者はむろん、大学や会社にも増えた中国人の同僚とのコミュニケーションツールのためにも役立ちそうだ。

(かんき出版 1980円)

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