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「出版と権力」魚住昭著

 出版社が舞台のドラマのヒットで再び注目される出版界。その活力を伝える編集者の伝記や回想が目白押しだ。



 よくぞ版元はこの本を出した、と評判になった力作ノンフィクション。講談社を設立し、日本の出版文化の礎を築いた野間清治に始まり、創業家の系譜に焦点を当てながら日本の出版産業史をたどる。しかもそれが日本思想史にもなっている。こんな本は他に類を見ないだろう。

 巻頭ではエリート志向の岩波書店を築いた岩波茂雄や、反権力を標榜した滝田樗陰の中央公論など、講談社とは違う話が結構長く続く。しかしこの長い前置きがあるからこそ、夏目漱石の時代から現在までをひとまとまりの大きな流れとして見渡すことが可能になる。

 大衆的な読者層へアピールして大きく成長を遂げた講談社は、戦時中、軍閥のお先棒を担いで戦争協力の旗振り役をも演じた。

 しかし戦後になると、一転してGHQの強烈な圧力にさらされながらも、したたかに命脈を保つ。その経緯を時代と人間の躍動として描き出す著者の視点は、600ページを軽く超える大冊でも一貫して揺るがない。

 本当は門外不出のはずの社外秘資料を提供したのは、著者の心意気を買った講談社内のベテラン編集者たちだったという。

(講談社 3850円)

「鬼才」森功著

 暴露週刊誌として「週刊文春」と双璧をなすのが「週刊新潮」。本書は「週刊新潮の天皇」と異名をとり、今日に至る出版社系週刊誌の暴露ジャーナリズムを確立した異能の編集者・齋藤十一の伝記だ。

 社内で出会うと誰もが足を止めるほど威圧的な存在でありながら、肩書はないに等しい。ところが毎週の「週刊新潮」の企画はすべて齋藤が決定し、見出しも他人に口を挟ませない。にもかかわらずスクープを連発して社内外から恐れられたという。

 評論家の小林秀雄と肝胆相照らす一方、芽の出ない純文学作家を次々に大衆小説の流行作家に仕立てたことでも知られる。サラリーマン編集者ばかりの昨今ではあり得ない話とはいえ、写真週刊誌「フォーカス」のころ、編集部員に「君たち、人殺しの顔を見たくはないのか」と言い放ったエピソードはSNSの現代にも通じる話だろう。

(幻冬舎 1980円)

「文春の流儀」木俣正剛著

「週刊文春」といえば今や泣くアイドルも黙る「文春砲」の本家。著者はその編集長を2回も務めた人だが、そのわりに本書の筆致にエグさはない。この点、本書に先立って出て評判になった柳澤健著「2016年の週刊文春」とはスタイルも中身も大きく違う。

 もともとおっとりした社風で知られた文春だが、田中角栄金脈の告発を機に新聞とは一味違う出版社系ジャーナリズムが花開き始める。花田紀凱編集長時代には取材費を惜しまず、暴露に精魂を傾ける。ただし著者は意識的におっとりした筆致で通し、新人記者時代の失敗談を惜しげもなく披露する。

 社内抗争で社長と刺し違え、みずからも常務で退職する経緯は島耕作さながら。

(中央公論新社 1980円)

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