「酪酸菌」を増やすには何をすればいいのか…がんや認知症も予防
ヒトの健康に役立つ腸内細菌といえば、腸のなかを弱酸性にして悪い菌を寄せ付けない“お掃除屋”の「ビフィズス菌」や、免疫を元気にして体を守る応援団「乳酸菌」を思い浮かべがちだ。しかし、「酪酸菌」も忘れてはいけない。腸内細菌が食物繊維を分解して作る短鎖脂肪酸のひとつで、腸の免疫環境に深く関わっている。悪い細菌が増殖するのを抑え、便通を改善し、免疫を高めるなど腸の中を元気にしてくれる。
注目したいのは酪酸はナイーブT細胞から制御性T細胞を誘導する働きがあることだ。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「制御性T細胞は、炎症反応を抑制的に制御して免疫応答が過剰にならないようにするブレーキの役割をする細胞です。自己免疫を生じないようにするのはもちろん、炎症や体内の異物や侵入してきたウイルスなどに対する攻撃も行き過ぎないように制御する働きがあります。酪酸は、骨髄で作られ胸腺で成熟したもののまだ抗原に触れたことのないナイーブT細胞が制御T細胞に分化するのを促す働きがあるのです」