「かぞえきれない星の、その次の星」重松清著

公開日: 更新日:

 かえる神社の年越しの神事は、カエルの置物の背中に置いた短冊に、「こうあってほしい」という願いではなく、「これ、なかったことにできませんか」という願い事を書く。ひっくり返るにあやかっているのだ。

 9年前の大晦日には、短冊が重なり合うほど詰めてカエルが置かれた。地震と津波で壊れた発電所が危険なエネルギーの毒素をまき散らしたからだ。その年はまだ幼い子どもの字で「3月11日」とだけ書いた短冊があった。今年は2年参りが中止になり、「2020」とだけ書いた短冊があった。つまり去年1年をまるごとなかったことにしたいのだ。

 小さな星のような11の物語を載せた短編集。

(KADOKAWA 1870円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    松坂桃李「御上先生」は連ドラの“勝ちパターン”を外してしまった? 1ケタ陥落で疑われる《失速と中だるみ》

  3. 3

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

  4. 4

    なぜオリ山岡泰輔だけが名前を晒されたのか…SNSでは「不公平」「一律公表すべき」の声

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希 異例の「マイナー相手に実戦登板」で見えた首脳陣の痛恨トラウマ

  1. 6

    大河「べらぼう」で横浜流星を食う小芝風花“瀬川”大好評も 迫る「身請け」危機…視聴率ついに1ケタ台突入

  2. 7

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 8

    大阪万博パビリオン建設は“24時間体制”に…元請けの「3月中には完成させろ!」で危惧される突貫工事の過酷労働

  4. 9

    “選挙のプロ”立花孝志まさかの凡ミス赤っ恥…第一声「神戸→船橋」急きょ変更のお粗末

  5. 10

    岡田将生『御上先生』での悪役ぶりが好評 顔面美を生かした怪演で俳優としての地位確立