「『若者の読書離れ』というウソ」飯田一史氏

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「『若者の読書離れ』というウソ」飯田一史著

「今どきの子は本を読まなくなった」とよく耳にする。たいていの大人はそう信じて「嘆かわしいことだ」と思っているだろう。しかし、事実は異なる。

「実は決して子どもは本離れしていない、と10年ぐらい前から感じていました。2010年代、中高校生に人気があったライトノベルの売り上げが右肩上がりの統計を見て、本当に子どもたちが本を読まないのであれば、こんなに売り上げが伸びるはずがないと思ったんです。そこで過去からの平均読書冊数を調べたところ、中学生は微増、小学生に至っては史上最高値を更新し続けていました」

 本書は、「若者は本を読まない」との通説が、実際とは異なるということを各種データを用いながら証明する。そして、中高校生が実際に読んでいる本を具体的に挙げながら、彼らが求めているニーズと好む本の型を探った興味深い一冊だ。

 全国学校図書館協議会が毎年実施している小中高生の「学校読書調査」によると、1980年代から90年代までは本離れが進んでおり、1カ月あたりの平均読書冊数は小学生約6冊、中学生約2冊、高校生約1冊だった。しかし、2000年代に入ると読書冊数が増え、なんと小学生約13冊、中学生約5冊とV字回復する。

「90年代末から小中高校での朝の読書運動が本格化したんですね。『朝読』の実施率は2020年では小中学校は80%、高校では45%でした。高校生は推進活動が手薄でしたが、本離れが進んだ時代よりも前から現在まで読書冊数にほぼ変化はないです」

 また、「学校外読書」の調査でも、不読率(1冊も本を読まない人の割合)は、本離れがピークに達していた97年より減っている。これらのデータを検証すると、今の子どもたちが書籍を読まなくなったとは到底言えないのだ。

 ではなぜ、子どもが本を読まないと言われ続けるのだろう。

「1つは本離れが進行していた時代の印象からくる思い込みですね。もう1つは、それを言う大人が教師や編集者といった平均以上に本を読んできた人たちであるということ。彼らに比べたら『少ない』のは当然です(笑)」

Z世代がハマる作品に共通する4つの型と3つのニーズ

 となれば、いまどきのZ世代はどんな本を読んでいるのかとの興味が湧く。

「理性よりも感情優位な彼らに刺さる本は3つのニーズを満たしているんです。フィクションでいえば、①感情に激しく訴えかける要素が顕著②思春期の自意識、反抗期、本音に訴える③タイトルなどから読後感が想像できる──です」

 著者は、さらに人気の作品には4つの型(登場人物や物語の設定などのパターン)があることに気づいた。そこに3大ニーズが効率よく含まれているという。代表的なのが「自意識+どんでん返し+真情が爆発」型で、住野よる著「君の膵臓をたべたい」が相当する。意外なことに太宰治の「人間失格」も、類似した作品として分類されているというから面白い。

「思春期の人に言えない悩み、大人に対する反抗心はいつの時代にもあります。人間失格はそれを掘り下げ、かつ短編で読みやすい。実話が元で、登場人物と作家を重ねて読むことができるため好まれるんです」

 ほかにもラノベ人気は過去の話、児童文庫を読む中学生など、Z世代の読書事情をあますことなく紹介する。

「大人が読んでほしい本と子どもが読みたい本ではズレがありますが、どんな種類の本であっても夢中になって読むということが大事です。大人は、子どもの興味のあるものを応援してあげることが望ましいと思いますよ」

(平凡社 1078円)

▽いいだ・いちし 1982年青森県生まれ。中央大学卒。グロービス経営大学院経営専攻修了。出版社を経て独立。ウェブカルチャー、出版産業、こどもの本、マンガ等について取材、調査、執筆。「いま、子どもの本が売れる理由」「ウェブ小説30年史」など著書多数。

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