「大神仏」小林伸一郎著

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「大神仏」小林伸一郎著

 結婚式は教会で、葬式はお寺、そして神社に初詣する日本人は、無節操、ひいては無宗教などといわれるが、裏を返せば信仰にあつい国民性ともいえる。本書を手にすれば、それがよく分かる。主に野外に安置された日本中の巨大な神仏像を撮影した写真集だ。

 彩色された広島県尾道市・耕三寺の「救世観音大尊像」をはじめ、長崎県西海市の金色に輝く「聖観音像」(西海楽園)や、漁の安全を祈願するように海に向かって安置された白亜の立像「呼子大仏」(佐賀県唐津市)を紹介。また、経文が刻まれた高い塔の上から人々を見守るように立つ「多摩平和長谷観音」(東京都町田市・東光寺)や、災いをはらい幸福を招く「除災招福大観音」(愛媛県宇和島市・龍光院)など、地元の人々に親しまれてきたであろう仏たちが写真に納まっている。

 中には、今にも森にのみ込まれそうな深い山の中で、山肌を体に見立てて仏頭を据えた「大釈迦坐像」(熊本県玉名市)や、天照大神が引きこもった天岩戸の扉を開ける場面を再現した、ちょっとアニメキャラにも見えなくもない「天手力男命(アメノタヂカラオノミコト)」(栃木県那須町・神命大神宮那須別宮)など、珍しいものもある。

 かと思えば、ドライブインの屋上に鎮座する大仏(北海道室蘭市・ドライブイン大仏亭)や、ホテルのプールサイドでライフガードのように客を見守る大仏(千葉県木更津市・ホテル三日月)、店のディスプレーを思われるサイケデリックな彩色が施されアートのような「五劫思惟阿弥陀仏」(東京都渋谷区)まで238尊を収録。

 これほど多くの大仏や観音をはじめ、諸々の神や仏がいたるところで人々を見守り、その祈りを受けとめていることを知り、日本人の信仰心のあつさに改めて感嘆する。 (東京キララ社 3300円)

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