著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「世界ではじめての女性大統領のはなし」ラウン・フリーゲンリング著 朱位昌併訳

公開日: 更新日:

「世界ではじめての女性大統領のはなし」ラウン・フリーゲンリング著 朱位昌併訳

 初めて相撲の世界大会を見に行ったとき、女子選手たちが躍動する姿に感激した。Tシャツ&スパッツの上にマワシを締めて土俵にあがり、立ち合いでは頭からバチーン! とぶつかっていく。

 インド、スウェーデン、ドイツ、ブラジル……各国の女性力士に質問してみた。女性なのに相撲をやるのは大変だったのでは? 彼女たちはポカンとして、質問の意図がわからないようだった。その反応を見てわたしは悟った。こちら側に偏見があると。

 女人禁制の大相撲がある日本では「相撲は男性のもの」というイメージが強く、女性のお相撲さんはまだ珍しい存在だ。でもそれは世界基準ではない。「お相撲さんと大統領」と言われて無意識にふたりの男性を思い浮かべる古い脳みそを更新しなければならない。今回この絵本を読んで、心底そう思った。

 北欧の小さな島国アイスランドで、世界初の女性大統領が誕生したのは1980年のこと。彼女の名はヴィグディス・フィンボガドッティル。少女時代の夢は「船乗りになること」だった。「女の子にそんなことはできない」と言われて育った彼女が大統領になるまでの軌跡が語られる。子ども向けなので込み入ったストーリーではないが、絵も文章もほがらかで引きつけられる。

 アイスランド在住の訳者による巻末の解説も読み応えがある。1975年の「女性の休日」について知るだけでも読む価値があるし、印象深いのは「ヴィグディスが大統領を引退するときには、『大統領は女性がする仕事だと思っていた』と言った子どもがいた」の一文。あぁ、こうやって世界は変わっていくのだ。 (平凡社 2090円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    公明票消失で自民衆院「東京選挙区」が全滅危機…「萩生田だけは勘弁ならねぇ」の遺恨消えず

  4. 4

    星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕

  5. 5

    「自維連立政権」爆誕へ吉村代表は前のめりも、早くも漂う崩壊の兆し…進次郎推しから“宗旨変え”

  1. 6

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 7

    国民民主党・玉木代表「維新連立入り」観測に焦りまくり…“男の嫉妬”が見苦しすぎる

  3. 8

    自民「聞いてないよォ」、国民・玉木氏「どうぞどうぞ」…首相指名の行方はダチョウ倶楽部のコント芸の様相

  4. 9

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  5. 10

    「ガルベスと牛乳で仲直りしよう」…大豊泰昭さんの提案を断固拒否してそれっきり