「五葉のまつり」今村祥吾著

公開日: 更新日:

「五葉のまつり」今村祥吾著

「戦」といえば先駆けや敵の首を挙げることなどに目が向きがちだが、実際は兵糧の調達や運搬、武器弾薬の手配、戦地になる村や寺への根回しなどの陰の仕事が大半を占めている。

 信長が本能寺で討たれた後に素早く明智を下した秀吉は、その重要性に早くから気づいていた。天下統一後の世に必要な事業を行うにあたり、こうした裏方の仕事がさらに重要になるため、秀吉はこれらにたけた奉行衆を集め、なかでも浅野長政、前田玄以、石田三成、増田長盛、長束正家の五奉行を重用した。本書は、この五奉行が、秀吉の大事業に立ち向かう姿を描いた歴史お仕事巨編。

 物語では、北野大茶会、刀狩り、太閤検地、大瓜畑遊び、醍醐の花見という秀吉が行った大事業に、どんな意図があり、どんな難題があり、どんな方策で達成に至ったのかを五奉行の目線から語られる。司法担当の浅野、宗教・朝廷担当の前田、行政担当の石田、土木担当の増田、財政担当の長束は、それぞれ得意分野を生かし、時にはぶつかり、秀吉の「よきにはからえ」を解決する。

 樹木の花とならずも葉のように働く姿に、応援したくなる。

(新潮社 2530円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも