「斜め論 空間の病理学」松本卓也著
「斜め論 空間の病理学」松本卓也著
本書冒頭で著者は「私たちは、『心』についてあまりにも垂直方向から考えてきたのではないだろうか?」と問いかける。従来、精神医学においては医師-患者といった垂直的(権威主義的)な関係を主とした治療が実践されていた。それが20世紀の末ごろから「心」を水平方向から捉え、横のつながりの中に回復の糸口を見いだそうとする言説が登場する。しかし新型コロナウイルス禍における同調圧力のように、横並びの関係性の中で互いの顔色をうかがいながら生活することもまた、権力による監視や支配につながりうる。本来、垂直性を批判することによって実現された水平性が、いつの間にか人々を横並びにする「平準化」になってしまったのではないか?
本書はこうした問い直しをすべく、精神病理学やそのほかの臨床心理学の言説の変遷をたどっていく。まず初めに、精神病理学において垂直方向を特権化したビンスワンガーやラカンを批判するドゥルーズの反-垂直方向の哲学が取り上げられる。

















