40歳は人生の折り返し…竹内結子さんとハワイロケの思い出

　その後、何かのパーティーで一段と凜々しくなった彼女と目を合わすや、「監督！　ごぶさたしてます」と声をかけてもらったのが、我には最後の思い出だ。彼女が何に苦悩していたかそれは知る由もないが、ご冥福を祈ります。

　日活ポルノから芸歴をスタートし、後年、我が作品にも連続して出てくれた末に、自死か事故死か分からないまま逝った先輩男優の堀礼文さんのことをまた思い出してしまった。

　日活の「（金）（ビ）の金魂巻」（８５年）というゲテモノ作品が縁で、演技のおかしさに感心させられ、角川の「二代目はクリスチャン」（同）でひょうきんな組員役に選ぶと、２カ月間の京都の現場を乗りきってくれた、愉快で気の合う俳優だった。どんなとっぴな演技注文にも応じてくれて、どれだけテークを重ねてもへこたれずにいる。（無礼を言えば）現場の“カンフル剤”であり、役者同士の芝居の“触媒”であり、とても気の回る兄貴分だった。

　堀礼文という稼業名は「アパートの鍵貸します」「チャイナ・シンドローム」の名優ジャック・レモンに憧れて付けたと本人に聞いた。京都で「れもんさん、このまま次の海賊モノも付き合ってよ。今度は主役の一人で」と誘うと“オレでいいんですか”という顔をしたが、半年間も瀬戸内海の現場を乗りきってくれた。その「犬死にせしもの」（８６年）が完成した後、一人で逝ってしまった。

　明治大卒で、柔道で鍛えた精神と全身で演じる人だった。竹内結子さんは享年４０歳。礼文さんは３９歳だった。まさに人生の折り返し点だった。合掌。