著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

恐怖のない安寧な死はある 104歳の女性患者に教えられた

公開日: 更新日:

 ある時、ベッドの上で目を閉じているRさんに声をかけると、左指で上まぶたを上げ、目をぎょろっとさせて「お! 先生、今何時? そう、10時か。私はまだ死んでいないのか。このまま眠って死んでいいのに」と口にされました。

 またある時は、「まだ生きていたか。もういいのに。苦しくもなんともないよ」と言われ、私が「お迎えが来ないと逝けないから」と話すと、「うん」とうなずかれました。

 次第にRさんは目を閉じていることが多くなり、呼びかけても返答のある時とない時を繰り返すようになりました。そして、近くの公園にたくさん咲いたコスモスを冷たい小雨が揺らしている日の午後に静かに息を引き取りました。息子さんは、「私も母のような死に方をしたい」と話されました。

 自然死では、恐怖のない安寧な死はあるのだ……私はそう思いました。

 そして、ロシア生まれの動物学者、E・メチニコフが約110年前に書いた「生と死」に登場する、あるおばあさんの話を思い出しました。


「もしおまえが私ほど長生きすれば、死が怖くなくなるばかりか、死にたいと思うようにもなる。眠りたくなるように、死にたくなる。……明らかに、ここで精神的能力を十分に保持している100歳の老女に、発達した自然死の本能が見られた。眠りの要求に似た、それほど年をとっていない人々にはわからない新しい感情があらわれた」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  2. 2

    「おい、おまえ、生意気なんだよ」 野村監督は俺の挨拶を“ガン無視”、暴れたろうかと考えた

  3. 3

    「オールスター感謝祭」で“ブチギレ説教” …島崎和歌子は今や「第2の和田アキ子」の域

  4. 4

    NHK朝ドラ「風、薫る」巻き返しを阻む“最大のネック”…見上愛&上坂樹里Wヒロインでも苦戦中

  5. 5

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ

  1. 6

    スピードスケート引退・高木美帆にオランダが舌なめずり “王国復権の切り札”として白羽の矢

  2. 7

    高市政権が非情の“病人切り捨て”強行で大炎上! 高額療養費見直し「患者の意向に沿う」は真っ赤なウソ

  3. 8

    ブチ切れ高市首相が「誤報だ!」連発 メディア、官邸、自民党内…渡る政界は「敵ばかり」の自業自得

  4. 9

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  5. 10

    『エニイ・タイム・アット・オール』1964年のジョンのギターを聴くだけで元気が出る