著者のコラム一覧
佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

意識はなくても「生きている喜びがある」状態は存在する

公開日: 更新日:

 主婦のMさん(60歳)は、定年を迎えた夫のFさんと娘さんの3人で暮らしていました。5年前の暑い夏に、目まいを感じたのが脳腫瘍との闘いの始まりでした。

 がんは大脳の広い範囲に及んでいて、手術では取りきれずに放射線治療が行われました。しばらくは小康を保っていたのですが、2年後の12月の寒い日に高熱を出し、その後、意識を失いました。病院に運ばれ熱は下がったのですが、意識は戻りません。経管栄養が始められましたが、体位を変える時に少し表情が変わったように見える以外は、まったく無表情のままでした。

 家族は、主治医から「出血とがんの再発で、もう意識が戻ることはない。長くもっても6カ月くらい」と告げられました。それから2カ月が過ぎた頃、Mさんは勧められた郊外の小さな病院に転院しました。自宅からは遠くなりましたが、病室の外は林になっていて自然に囲まれています。Fさんと娘さんは交代で見舞いに通いました。

 Fさんは覚悟していましたが、「一度はまた意識が戻ってくれないか」という期待も抱いていました。しかし、少しでも長く生きて欲しいと思う一方で、時には「意識が戻らないなら、このまま生きていることは幸せなのだろうか?」と考えたり、ある人から「意識がなく、経管栄養で生かされては生きている意味がない」と言われたのを思い出したりもしました。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?