著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

元宝塚女優が急逝…甲状腺未分化がんを「最凶」と恐れる理由

公開日: 更新日:

 峰さんは、昨年1月に肩の違和感を心配されています。タラレバになってしまいますが、その時点なら未分化がんになる前の分化がんだったかもしれません。そのタイミングで治療ができていれば、治った可能性があったと思われます。

 未分化がんになってしまうと、進行が速く、手術と放射線、抗がん剤を組み合わせて治療しますが、放射線と抗がん剤は効かず、延命できるケースは多くはありません。峰さんも昨年7月の診断から5カ月、昨年末には余命3カ月と告げられたといいます。

 昨年のがん罹患数は101万人と予測され、甲状腺がんは1万8000人ほど。未分化がんは、甲状腺がん全体の1%ほどですから、きわめてまれながんでも、その悪性度は高い。

 日本では「甲状腺未分化癌研究コンソーシアム」をつくり、分析していますが、生存例はわずか。診断から1年以上の生存は、レアケースなのが現実。がん専門医の私も、「最強・最凶のがん」としてすい臓がん以上に恐れています。

 つらいがんだけに、痛みのケアはもちろん、精神的なケアのため早期から緩和ケアを受けることが不可欠。米甲状腺学会のガイドラインでも推奨されています。

 首の腫れや痛み、声のかすれ、食事ののみ込みにくさなどを感じたら、ためらうことなく内分泌内科を受診し、触診やエコー検査を受けることが大切。さらにしこりの一部を採取して生検も重要です。受診はためらわずに。それが、今回の教訓といえるでしょう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず