著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

主役は患者 食べるものも生活リズムもすべて好きなように

公開日: 更新日:

 本棚がある家、絵画が飾ってある家、缶チューハイや大五郎などの焼酎のペットボトルが鎮座している家など、本当に千差万別です。それら患者さんの生活スタイルや大事にしていることなどを受け止めながら、あくまでも私たちがお客さんなのだという意識で診療を行っています。

 かつてこんな患者さんがいました。その方はアルツハイマー型認知症を患う92歳の独居の男性で、通いの家政婦さんに毎日身の回りの世話をしてもらっていました。

 入院先の病院から在宅医療の導入を勧められ切り替えたのですが、入院中はずっと寝たままで、テレビを見ることもなかったといいます。ところが退院して家に帰ったら、テレビで日時を確認したり、食べたいもののリクエストを出したり。訪問診療のスタッフが来る日には、ヒゲをそり、ワイシャツを着て、ピシッと身支度を整える――。

 入院していてはこのような生活スタイルは望めません。この患者さんの場合、在宅医療に切り替えたことで、患者さん自身の中に眠っていた生活を主体的に送ろうとする積極的な気持ちを取り戻せたのでしょう。

 その後、妹さんの強い要望で施設に入所されました。しかし、たとえ一時的だとしても、療養に対しても、生きることに対しても、積極的な気持ちを持てるようになった在宅医療の期間は、患者さんにとってさぞかし貴重で有意義な時間だったのではと考えるのです。

【連載】最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性