著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学元教授、医事評論家

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

ブヨに刺されたら…唾液を吸い出し、水で洗い流し、冷やす

公開日: 更新日:

 1960年代まで、ブヨは全国的に生息していて、梅雨時から8月一杯まで人々を悩ませ続けていました。しかし1970年代を境に全国で激減。いまでは山奥の水辺などでしか見かけません。

 というのも、彼らの幼虫は清流でしか暮らせないからです。少しでも水質が悪化すると、姿を消してしまいます。国交省の「生物学的水質判定」の指標生物に指定されているほどです。サワガニやトンボのヤゴなどとともに、水質Ⅰ級(きれいな水)の指標生物になっています。ちなみにⅡ級(ややきれいな水)にはゲンジボタルが属しています。ブヨは、ホタルよりも水質に敏感なのです。

 古い資料を調べていくと「成城足」という言葉に行き当たりました。1950年代、東京都世田谷区成城において、当地の大学や短大に通う女学生の足に特徴的な赤い発疹が多く見られたというのです。その原因がブヨでした。つまり夏になると、女学生たちがよくブヨに刺されて、近隣の皮膚科を頻繁に受診していたわけです。

 そこで地図を確認すると、成城地区は多摩川の支流である野川と仙川に挟まれた土地であることが分かります。その地で生まれ育った知り合いに聞いたところ、野川も仙川も、60年代まではホタルが普通に飛び交っていたそうです。それより前の50年代なら、文字通りの清流だったことでしょう。つまり2つの清流に挟まれた土地だったからこそ、女学生たちが「成城足」に悩まされていたわけですし、都内にもそんな場所が残っていた証拠にもなります。

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