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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

化学療法の前に受精卵の凍結保存を選び授かった子供が希望になった

公開日: 更新日:

 医療従事者のMさん(43歳・男性)は、ある病院で悪性リンパ腫の診断を受けました。奥さんは35歳、結婚してまだ3カ月でした。

 Mさんは全身化学療法を行う前に奥さんと一緒に産科のある病院に行き、受精卵の凍結保存をすることにしました。強い化学療法を行った後では精子が減り、子供が出来なくなるかもしれないからです。Mさんは、「妻は大変だろう」と思いましたが、本人はむしろ積極的に同意してくれました。

 その後、Mさんの悪性リンパ腫の治療は順調に進み、表在リンパ節は一時的に消えました。Mさんが寛解して元気な時に、奥さんは凍結した受精卵で妊娠し、そしてかわいい男の子が生まれました。

 ところが3年後、Mさんのリンパ腫は再発し、今度は骨髄にもリンパ腫の細胞が浸潤し、大変厳しい状況となりました。

 再発した3回目の入院の時、Mさんは担当医に生まれた子供の写真を見せて言いました。

「頑張ります。よろしくお願いいたします」

 担当医からは、「かわいいですね。息子さんですね。一緒に頑張りましょう」との言葉が返ってきました。つらい治療が繰り返される中、Mさんにとって子供は唯一の希望の星でした。自分の命がつながった、そのことだけではありません。

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