著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

高額療養費問題で注目…がんの医療費「手術」「放射線」「抗がん剤」で最も安いのは?

公開日: 更新日:

 医療費だけでなく、早期の内視鏡治療で済めば、入院も数日で済みますから、仕事への影響もとても少なくて済むのです。私はステージ1の膀胱がん手術で治療しましたが、入院はわずか3日でした。

 こうした傾向はほかのがんについても当てはまりますが、治療法によっても医療費はかなり異なります。肺がんのステージ1を胸腔鏡下手術で治療すると、180万円ほどかかりますが、ピンポイント照射の定位放射線治療なら70万円と半分以下です。早期肺がんで手術と放射線の治療成績は同等ですし、肉体的な負担も放射線が軽いですから、放射線を選択する余地は大きいでしょう。

 さらに手術や抗がん剤は入院を伴うケースがあります。それで個室を希望すると、差額ベッド代がかかります。1泊3万円程度は珍しくありませんが、この差額ベッド代は保険の対象外です。高いからといって副作用のつらさなどを考えると、個室を希望する方は少なくないでしょう。手術や抗がん剤で治療費より重い負担がこの差額ベッド代です。3万円の個室に1カ月入院したら、90万円ですから。一方、放射線は通院が原則ですから、差額ベッド代を心配する必要はありません。放射線の照射回数は、早期肺がんで4回、前立腺がんは進行していても5回です。

 高額療養費の自己負担額引き上げは、患者さんにとって切実な問題ですが、それに目を奪われることなく早期発見に努めることが何より重要でしょう。亡くなった義妹は、大腸がんの早期発見に役立つ検便を受けていませんでした。それで早期発見できれば、体にも懐にも優しい治療法を選択できるのですから。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性