(18)ただ話を聞いてくれる人がいるということが大きな支えになった

公開日: 更新日:

 母の突然の認知症の診断、コロナ禍で接触できず叔母たちに頼るしかない状況、「なぜ入院させたのだ」と怒り狂う父。父自身もその頃はかなり体調が悪かった。それなのに、病院に行くこともヘルパーを頼ることもかたくなに拒否し続けた。

 実家に残された4匹の猫たちがきちんと世話されているのかも気掛かりだったが、母の入院をめぐって口論になるので私は次第に父に連絡するのを避けるようになった。

 猛暑の中、東京と熊本を何度も行き来し、さまざまな連絡や手配を続けたことが東京での仕事のスケジュールや生活を狂わせ、余裕を奪い、私自身が疲弊していった。頭がぼんやりして体が重く、気力が湧かない。ついには自分の心の調子がおかしくなっていたようだ。当時の記録を見ると「私、なんで生きてるんだろう状態でヤバい」と書いている。

 この間、一連の出来事を幾人かの友人に聞いてもらっていた。しかし、あるグループメッセージでは、次第にまったく反応がなくなった。私の話が友人たちに負担をかけていたのだろう。後日ひとりと会う機会があり、聞いてみたところ、「暗くて重い話を聞きたくなかったから、あなたと会うのはやめようと皆で話し合った」とのことだった。仕方のないことだと思ったが、悲しい気持ちにもなった。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中学受験で慶応普通部に進んだ石坂浩二も圧倒された「幼稚舎」組の生意気さ 大学時代に石井ふく子の目にとまる

  2. 2

    横浜とのFA交渉で引っ掛かった森祇晶監督の冷淡 落合博満さんは非通知着信で「探り」を入れてきた

  3. 3

    出家否定も 新木優子「幸福の科学」カミングアウトの波紋

  4. 4

    国宝級イケメンの松村北斗は転校した堀越高校から亜細亜大に進学 仕事と学業の両立をしっかり

  5. 5

    放送100年特集ドラマ「火星の女王」(NHK)はNetflixの向こうを貼るとんでもないSFドラマ

  1. 6

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー

  2. 7

    【京都府立鴨沂高校】という沢田研二の出身校の歩き方

  3. 8

    「核兵器保有すべき」放言の高市首相側近は何者なのか? 官房長官は火消しに躍起も辞任は不可避

  4. 9

    複雑なコードとリズムを世に広めた編曲 松任谷正隆の偉業

  5. 10

    中日からFA宣言した交渉の一部始終 2001年オフは「残留」と「移籍」で揺れる毎日を過ごした