(20)そろそろ自分たちで…頼みの叔母から切り出された

公開日: 更新日:

 私は電話で叔母たちに、見えないけれど深く頭を下げ、母の通院の付き添いをお願いした。しかし、回数を重ねるにつれ、ひとりの叔母がため息をついた。「そろそろ自分たちでなんとかしてくれないか」。そう言われるのは当たり前だ。

 私は母がいつまで認知症専門医院に入院していなければならないのかが気になり始めた。数カ月前までは関心を抱いたことすらなかった介護保険についても、すでに調べ尽くしていた。母の今後を決めるためにも、叔母たちに迷惑をかけず我々家族が生活していくためにも、まずは母の介護認定を受けなければならない。もう公的支援に頼るべき時期だと考えた。

 後日、実家で見たカレンダーに父は「1」「2」……と数字を書き込んでいた。まるで、母が戻ってくる日を指折り数えるかのように。父は、母が元気になって家に帰ってくるものと強く信じていたのだ。

 しかし、母が元通りに実家で生活できることはもはやないだろう。私にはこの頃から、静かな諦めが育っていった。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  3. 3

    永野芽郁が“濡れ場あり”韓流ドラマで「セクシー派女優転身、世界デビュー」の仰天情報

  4. 4

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  5. 5

    海星・陣内優翔は長崎県初の“完全男”だが…スカウトが「上位獲得」を渋るワケ

  1. 6

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  2. 7

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  3. 8

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  4. 9

    長崎を熱狂させた海星・酒井圭一さんが当時を語る…プロ引退後はスカウトとして大谷翔平を担当

  5. 10

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩