肺がん末期の80代男性「いつ最期を迎えてもおかしくない…どうしても今日、家に帰りたい」
電話口の病院担当者の声には、急な展開への戸惑いがにじんでいました。
「今晩中に亡くなる可能性もありますが、先生、往診をお願いできないでしょうか?」
もちろん私はその依頼を受け、ただちにご自宅へ向かいました。
「今、苦しさはありませんか?」(私)
「さっき熱があって……病院へ行った方が楽だったのかしら」(奥さま)
「病院でも、できることには限りがあります。ご本人が安心できる場所が一番良いと思いますよ」(私)
「もう会話もままならなくて……」(奥さま)
ご自宅に戻ったことが本当に正しかったのか、不安を感じているご様子でした。
「必要なときに、必要なだけ会話はできます。声は最後まで届いていますから、一番大切なのは、奥さまと過ごす時間です。今日はたっぷり一緒にいてあげてくださいね」(私)
「はい」(奥さま)