(29)時はコロナ禍…東京ー熊本の行き来は絶対に誰にも言えない
2度に分けて猫たちを東京に運び終えると、少し前からなんとなく感じていた精神的な疲れが突然、大きな波となって襲ってきた。母はどうなっているかわからない状態で入院している。そして父はいなくなった。もうこの家に誰も帰ってくることはなくなったのだ。
昨年の今頃には夢にも思っていなかったことが今、起きている。それでも進めなければならない実家のこと。そして自分自身のフリーランスの仕事。これらに挟まれ、私は突然、何も考えることができなくなった。
この頃のメモを見ると「孤独感が大きくて胸がつぶれそうだ」と書いている。さらに仕事仲間に効率が落ちていることを激しく責め立てられるという出来事が起きた。重圧で混乱していることが理解してもらえないという恐怖が加わり、私は追い詰められていった。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。