認知機能の低下に真っ先に気付くのは自分自身
いま重要なのは「早期予見・早期予防」
「早期発見・早期治療」と「早期予見・早期予防」では何が違うのか。
早期発見は認知症を早く見つけて、早く治療をしようということ。
一方、早期予見・早期予防は、認知症を発症する前に予兆に気付き、予防策を講じて認知症を発症するのを食い止めよう、もしくは遅らせようということです。
通常、認知症で早期発見という場合、当事者に、というより、ご家族や周囲の方に向けてのメッセージになりますが、早期予見・早期予防の場合、カギとなるのは自身の直感です。
前述の通り、SCDの段階では本人しか気付いていません。「ど忘れ」という言葉で片付けてしまいがちですが、本人はきっと、これまでの「ど忘れ」と何か違うと感じているはずです。違和感の原因を探るのを先延ばしにせず、何が問題かを調べてほしいのです。
SCDやMCIの段階では、認知機能の検査を受けても「異常なし」となる可能性も高いです。
しかし現在は、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβの蓄積量を調べられる検査機器、アミロイドPETを備えている医療機関が少しずつ増えてきています。
当院は開業時からアミロイドPETを設置し、一般の人向けに検査を行っていましたが、当時そういうところは他に皆無でした。アルツハイマー病の新薬が承認され、その対象かどうかを調べるためにアミロイドβの検査が必須になって以来、状況が変わってきています。
アミロイドPETの検査費用についても、以前と比べて下がってきています(アルツハイマー病の新薬の対象となるかどうかを調べる時のアミロイドPET検査は保険適用ですが、自身のアミロイドβの蓄積量を調べるための検査は自費になります)。敵(アミロイドβ)の存在を知って対策を講じた方が効率的だと思いますが、その存在を知る手段が身近になったのです。