(31)母の退院後の施設探し…費用は一体いくらかかるのか
問題は費用だった。母の収入源は、父の死後に受け取ることになった遺族年金のみである。電話で手続きをした際、具体的な支給額はすぐにはわからなかったが、担当者から「おおむねお父さまの年金額の4分の3くらいになるでしょう」と聞かされていた。その金額を基準に、月々の施設費用の上限を設定した。
ただし、この時点では、施設の入居費用以外にどのような支出が発生するのか、私はほとんど想像できていなかった。日用品、薬代、通院交通費、理美容代など、日常生活にかかる細かな出費が積み重なることを知らなかった。あくまで「施設費用=毎月かかる全費用」という前提で考えていたのである。
施設の候補は条件をもとに絞り込まれていくことになったが、コロナ禍であったことで、判断は限られた情報と想像力に頼るしかなかった。見学もできないまま、フリーランスとして引き受けすぎともいえる量の仕事の中、環境、費用、支援体制などを資料と電話で検討する作業が続いた。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。