下肢装具は「メンテナンス」が重要なのはなぜか
かつて、脳出血の後遺症で右半身が完全に麻痺した30代の男性が当院でリハビリ治療を行いました。その患者さんは身長175センチ、体重98キロの肥満体形で高血圧も放置した状態でした。長下肢装具を使った歩行リハビリと並行して、再発予防のための減量にも取り組む必要がありました。結局、6カ月間にわたるリハビリ治療を実施し、体重は75キロと23キロの減量に成功して血圧も安定しました。ただ、入院時の98キロだったときに作製した長下肢装具は、減量による体形の変化で、当然ぶかぶかになって合わなくなってきます。そのため、下肢装具は経時的に細かいメンテナンスが欠かせないのです。
こうした下肢装具を使った歩行リハビリにより、最終的には短下肢装具と杖を使って6分間で265メートル歩けるようになり、自宅退院されました。このように、体形が変化したり、回復の度合いに合わせて長下肢装具を短下肢装具に変更するなど、下肢装具は一度作ればそれで終わりではないのです。
退院後、当院と自宅との距離の問題などで、当院外来リハビリが終了してからも、下肢装具を装着して日常生活を送る患者さんも少なくありません。そうしたすべての患者さんには、「もし装具に不具合があったり、何か困ったことがあれば、装具外来に来てください」とお話ししています。