体調不良が続く「極暑バテ」にご用心!
夏バテとは異なる「極暑バテ」の怖さとは
45日間連続して猛暑日地点が現れたり、北海道で40度に迫る気温を観測するなど全国で異常な暑さを記録した今年の夏。
災害級と言ってもいい猛暑で体調不良に陥っている人も多く、免疫力の低下も懸念される。
このままではこれからの秋冬に本格化する感染症シーズンが心配だ。そこで、対策を専門家に聞いた。
四季折々の天候に恵まれていた日本も、最近は地球温暖化や偏西風の蛇行によって高気圧が居座ることで起こるヒートドーム現象の影響を受けて夏の期間が長くなり、春や秋といった過ごしやすい時期が短くなる「二季化」が進んでいる。
近年では何カ月も続く記録的な猛暑によってこれまでの単なる夏バテとは異なる、夏バテと残暑バテ、さらには秋バテの症状が重なる新しいタイプのバテである「極暑バテ」が特に顕著になってきており、それによってカラダの不調を訴える人も少なからずいるのが現状だ。
今年7月、㈱イー・クオーレが全国の20~69歳、1000人を対象に実施した「夏の体調管理に関する意識・実態調査」を見ても、暑さによるカラダの影響として半数強の53.4%の人が疲労感を強く体感。
さらに、3割はだるさや倦怠感など体調を崩していることを訴えており、しかも1回だけではなく、それを平均2.8回繰り返している。これらの結果からも「極暑バテ」の加速が明らかになっていることが分かるはずだ。
感染症シーズンに入る前に、きちんとした対策を
「極暑バテ」が起こることで最も懸念されるのは「免疫力の低下」だ。
麻酔科医で現代バテに詳しい済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜先生は、「バテとは何らかの原因によってカラダが疲れすぎてしまった状態で、その原因に対抗するエネルギーが不足してしまった状態を指します。バテの中でも『極暑バテ』がとりわけ厄介なのは何度も繰り返してやってくることで、一時的に治ったとしても再び発症して長引くことが大きな特徴と言えます。しかも、中には重症化するケースもあり、油断は禁物です」と、その怖さを語る。
さらに、谷口先生が心配していることがある。長引く「極暑バテ」をそのまま放置しておくと、免疫力が低下したままインフルエンザなど感染症の本格シーズンである冬を迎えることになるということだ。
「今年は6月から百日咳が大流行して累計の患者数は過去最多の6万人を超えています。感染者数は7月にいったん減りましたが、今また上昇しています。また、7月には新型コロナの感染者数が増加し、8月も依然として増え続けています。こうした状況も免疫力が低下しているから起こっていることで、見逃すことのできないかなり深刻な事態と言えるでしょうね」
「落ちてしまった免疫力を短期間で回復することは難しく、感染症シーズンに突入してから免疫力回復の対策を講じても間に合わないのです。その意味でシーズンに入る前から極暑バテ対策を取っておくことはとても重要です」
免疫力アップに欠かせない「小腸」の健康維持
免疫力のアップを考える時、意識しておかなくてはならないことがある。それは「小腸」の働きのことだ。
腸は7割の免疫細胞が集まっているとされ、免疫システムの要となっている極めて大事な臓器だ。
そのため「極暑バテ」によって消化器官が弱まると免疫力が低下してしまうのだ。
つまり「極暑バテ」で免疫力を下げないためには腸内環境を整えることが何よりも大切ということだ。
では、「極暑バテ」に負けないカラダをつくるためにはどうしたらいいのか、引き続き谷口先生に聞いてみた。
「『極暑バテ』かなと思ったらまずは休息を取りましょう。無理して仕事や家事を続けているとバテは悪化するばかりです。次に大事なことは規則正しい生活を送るとともに、その中でストレッチやスクワットなどの軽い運動を取り入れること。朝起きて日の光を浴びるとセロトニンという脳内ホルモンが産生され、それが夜になるとメラトニンに変化して睡眠の質の低下を防いでくれます」
「さらに、腸の消化吸収機能を低下させないためにはヨーグルトなどの発酵食品を摂って腸内環境を整えることも大切です。ヨーグルトは夏に食べやすく、たんぱく質が豊富で栄養補給に最適な食品です。キウイやバナナなどの食物繊維を多く含む果物との相性もよく、栄養バランスも整うので一緒に食べるようにするといいでしょうね」
ある試験結果によると、特定の乳酸菌が含まれたヨーグルトを継続的に摂取したところ、夏時期の疲労感やバテ症状が軽減されたという。
異常気象が当たり前になっている日本では「極暑バテ」対策を心がけておくことが、この先、冬になっても感染症にかからず元気に過ごせる最善策と言えそうだ。
猛暑や生活環境の変化で、多様な「バテ」が増加。本書は代表的な10種を医学的に解説し、バテ克服のための処方箋を提供している。