先輩に蹴られてこの世に戻された…浪曲師の真山隼人さん急性硬膜外血腫を振り返る

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真山隼人さん(浪曲師/30歳)=急性硬膜外血腫

「どこ? どないしたん?」

「あんた、酒に酔って階段から落ちたんやで」

 息がぜいぜいして苦しいし、酸素マスクされてるし、拘束もされていて、頭も痛い。何がなんだかわかりませんでした。

 2021年10月22日の夜、噺家の先輩とYouTubeの酒飲み配信をして、翌朝8時に目覚めました。夜には仕事があるので、午後2~3時には共に舞台を務める三味線の沢村さくらさんのところでお稽古をする予定でいました。仕事先の方と、沢村さんに「今日はよろしくお願いします」とLINEをしたのが朝9時23分。「あとで床屋にでも行くか」と思いながら、ゴミ出しのために外に出ました。

 次の瞬間、日付は10月26日の昼に飛んでいて、僕は関西一の脳外科がある病院のICUにいたのです。3日間意識不明の重体でした。

 命の恩人は、近所に住む沢村さくらさんです。お稽古の時間になっても私が来ないので、家まで来てみたら、外にゴミが散乱していて、ドアのカギは開いていて、中では私が布団に横たわって、顔の左側を腫らして「頭が痛い」と言っていたそうです。

 救急搬送され、家族が三重県から呼ばれました。「急性硬膜外血腫」は、外傷により脳を包む硬膜と頭蓋骨の間に血腫ができて脳を圧迫する状態です。先生によれば、あと1時間発見が遅かったら命はなかったそうです。

 脳挫傷(脳の損傷・出血)も起こしていたので、もう少しで脳の言語野がやられていた……そんな一刻を争う事態だったとあとで伺いました。

 6時間の開頭手術をし、輸血もし、血腫は取ったけれど、そのあと肺炎になってしまって、再び命の危機でした。だいぶ暴れて拘束されました。といっても、自分はまったく意識がないときのことです。

 その頃、私は“三途の川”を見ていました。きれいなお花畑と聞いていましたが、自分の場合は枯れた草にどす黒い川でした。地獄だったのかもしれません(笑)。そこで出会ったのが、すでに亡くなられた浪曲の先輩でした。私の大師匠・真山一郎のライバルだったその先輩はやさしく迎えてくれそうだったのですが、「否、君の師匠がまだなのに、君が先にうちにいたらあかんやろ。帰れ!」と蹴られて、この世に戻されたのです。

 その2カ月後、92歳で大師匠が亡くなりました。もし順番が違っていたら、あのまますんなり天国へ行っていたかもしれません。大師匠に感謝しました。

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