最期まで自宅で介護したい…現実との葛藤
入院先の病院を決める際の条件としては、自宅からの近さ、早期の入院が可能であること、費用が安いことなど、さまざまな要素が考慮されます。
この患者さんのケースでは、娘さんが精神的に相当なストレスを感じていたため、私たちはとにかく早く入院できる病院を選定しました。
当初、娘さんは「これまで母にはいろいろ迷惑をかけてきたので、母の介護だけは最期までやりとげたいんです」と涙ながらに訴え、入院を拒まれていました。しかし、一時的な入院であることを納得され、期間が終われば再び自宅での介護を頑張る、と言ってくださいました。
私は娘さんの強い葛藤と思いを考慮しつつ、こうお伝えしました。
「私の経験上、多くのお母さまは最期まで家族のことを心配し、『家族が大変だから施設に入れてください』と頼む人もいます。無理をなさらず、またつらくなったらおっしゃってくださいね。調整しますので」
私たちはお二人の無理のない範囲で、見守ることにしました。
介護するご家族は、追い込まれていることが多いものです。診察中に泣いてしまったり、切羽詰まった様子でお話しされたりすることもあります。
大切な人を自宅で見送ることに伴う、予想を超えた緊張感やストレスの大きさを理解したうえで、ご家族の気持ちに寄り添うこと。これこそが、在宅医療のあるべき姿だと私たちは考えています。



















