【特別編】ランは健康に良くない? 米国の研究が示す意外ながんリスク
ここでルービン医師はある仮説を立てている。ランニングにより慢性的な炎症が続くことで、細胞の損傷と修復のサイクルが繰り返される。その過程で細胞分裂に不具合が生じ、変異が紛れ込み、がんを引き起こす可能性があるかもしれない。
こうした仮説を証明するためのさらなる研究について、キャノン医師のチームは専門誌「ランナーズワールド」のインタビューに答えている。今後はランナーのスマートウオッチのデータと腸の病変の進行を照合、さらに腸内フローラやインスリン様成長因子(IGF)など、分子レベルでの変化を追う予定だという。
もちろん、マラソンが健康に悪いという話ではない。有酸素運動が心血管疾患のリスクを下げることは数多くの研究で確認されている。ルービン医師も「走るのをやめろと言うつもりはない。むしろ走るべきだ」と語る。ただし「自分の体の声に耳を傾けることが大切だ」と強調する。
今回の研究が示したのは「ランナーだから健康とは限らない」という事実だ。走ることが健康の象徴である時代だからこそ、体のサインを見逃してしまう危うさがある。血便や腹痛、下痢などの症状が続く場合は、運動による一時的な不調と決めつけず、専門医の診断を受けること。年齢や家族の病歴に応じて、定期的に大腸がん検診を受けることが重要と、医師たちは指摘する。
極端な持久運動がどのように体に影響するのかは、今後の研究を待つ必要がある。しかし一つだけ確かなのは、体が発する小さなサインを軽視してはいけないということ。
マラソンは体との対話のスポーツだからこそ、それを日常の健康管理にも生かしたい。



















