今の抗がん剤が実質“最後の薬”…小川千鶴子さん語る後腹膜脂肪肉腫との苦闘

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世界で書の個展をやってみたい

 22年の手術が最後の手術になりました。何度も手術をして、もう腸壁が薄くなっていたんでしょう。術後に腸に穴が開いてしまって、このままでは危険だからと、翌日また手術することを告げられました。神様は乗り越えられない試練は与えないといいますが、さすがに「もう乗り越えられません」と思いましたよ。

 しかも翌日、穴を塞ごうとしても縫えなくて、結局、自然に穴が塞がるのを待つことになりました。2カ月近く飲まず食わずで、点滴だけで生きた日々。それが22年晩夏のことです。

 ここでひとつ奇跡が起きました。じつは11月に女性の社会進出をテーマにした「ミセスコンテスト・グローバルユニティジャパン」に出場が決まっていて、「何が何でも出る!」と燃えていたら、医師の想定よりも早く腸の穴が塞がったのです。先生も「あれは奇跡だった」と後日談で話されていました。

 10月末に退院して、11月の大会に出場して賞をいただき、23年末の世界大会にも出場。「強い思い」が穴を塞いだのだと思っています。

 でもじつは、その世界大会の前に再発が見つかっていました。同年5月からがん研有明病院で治験に参加したけれど、あまり効果が見られず、治験の対象外になりました。ひどい副作用の印象だけが残り、治験の厳しさを知りました。

 24年からも強い抗がん剤をやりましたが、薬を替えても少しずつ大きくなってしまって、その頃に「緩和ケアを」という話が出たわけです。

 今の抗がん剤は実質“最後の薬”です。24時間の点滴で投与するタイプの抗がん剤で、そのたびに5日間入院しなければなりません。でも3回目が終わった時点で副作用がほとんどなく、進行もほぼ抑えられているので、続けられるだけ続けたいと思っています。

 治療は、医学の力も大事だけれど、メンタルも重要だと思います。“がん友”もたくさんできました。みんな明るくて、よく「死ぬ気がしない」なんて笑っています。がんになった人に与えられる新たな気づきや出会いを「キャンサーギフト」といいますが、ただのなぐさめではなく、本当にあると思います。

 病気のこの先はあまり考えませんが、かなえたいことはたくさん考えます。目下は書の個展。「世界でやってみたい」が最大の野望です。

(聞き手=松永詠美子)

▽おがわ・ちづこ 大学卒業後、食品メーカーに入社するが、数年後、テレビリポーターに転身。トークショーで書家の武田双雲氏と共演したことから書道を学び、2018年に「小川華雲」の雅号を受けた。翌年、師範の資格を得て21年に書道教室(東京・戸越銀座)を開講。フリーアナウンサーと書家の2つの顔を持ち活動している。

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