著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

世界中で問題になっている「多剤耐性菌」には細心の注意が必要

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 世界的な医学誌「ランセット」で発表された研究によると、2021年の多剤耐性菌に関連する死亡者数は世界で約471万人と推定され、2050年には多剤耐性菌に関連する死亡者数が約822万人に達する可能性があるとされています。日本でも、MRSAなどの多剤耐性菌による菌血症により、年間約8000~1万7000人が死亡していると推計されています。多剤耐性菌に対する抗菌剤は限定的ですが高額な医薬品でもあり、感染症対策に関わる医療費の高騰にもつながるので、多剤耐性菌は世界中で深刻な問題となっているのです。

 もちろん、われわれも多剤耐性菌、特に冒頭で触れたMRSAとVREに注意を払っています。

 MRSAは、人間や動物の皮膚などの体表面に常在するブドウ球菌が、メチシリンやマクロライドなどの抗菌剤に耐性を持ったものです。通常は無害ですが、免疫力が低下している患者さんや高齢者が感染すると、産生される毒素によって、肺炎、敗血症、心内膜炎といった重症感染症を引き起こします。敗血症になると他の臓器を容易に障害して死亡する可能性が高く、外科医にとっては最大の敵といえます。

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