(35)サ高住への入居を拒否する母を説得できるのは誰なのか
ようやく家の中に入ったおかんはヨロヨロと歩きながら、閉めていた雨戸を開け始めた。これもかなり危なっかしい。ヒヤヒヤしながら見守っていると、今度はお茶が飲みたいとお湯を沸かし始めた。これは長丁場になりそうだ。
別の部屋に行き兄に報告の電話を入れるなどして戻ってくると、おかんは郵便物の確認をしている。だが、お茶を用意した形跡がない。もしや、と台所を確認すると、空だき寸前のやかんを発見。慌てて火を止め注意すると「忘れていたわけじゃない」と意固地なひと言。いやいや、完全に忘れていたでしょ。これがひとり暮らし中だったらと思うとぞっとした。
その時、ひとつ思いついた。そうだ、老健でおかんが慕っていた看護師ならうまく説得してくれるかもしれない。ダメ元で電話を入れ事の次第を話してみると「わかりました。お母さんと話してみます」。ありがたい返事に感謝しつつ、おかんに電話を渡したのだった。



















