伝説のバーテンダー井山計一の愛弟子・秋田治郎さんは声を失ってもカクテルを作り続ける
58歳で「ステージ4」の下咽頭がんの診断
実は治郎さんは声が出ない。下咽頭がんで声帯を失い、小型振動機をノドに当て電気式人工喉頭で話しているのだ。
「58歳で下咽頭がんになり、一度はあきらめた命です。秋田の大学病院に診てもらい『ステージ4』の診断。東京の病院にセカンドオピニオンで診てもらいましたが、こちらも『手術はできません』という結果に。なにしろ右の首筋のリンパに転移していて、肝臓にもカゲができていましたから。たまたま当時の最新機械で手術までこぎつけましたが、14~15時間に及ぶ大手術でした」
ニコリと笑って右肩を寄せてくるので触ってみたら、リンパ切除で右の鎖骨の下の筋肉がポコッと陥没している。
「筋肉がないので一定のシェーキングができない苦労もあるんですよ」
■秋田県にかほ市の文化交流の拠点として
そんな話をしていたら1人目のお客さんが……。単身赴任中だというTDKの社員だ。土曜日は常連の老若男女が集まって宴席が催される。それまで気付かなかったが、店内のランプがいい具合に辺りを照らしている。オープンから47年、カクテル・ジローは地元の文化交流拠点ともなっているようだ。
ただし、いつもは得意の料理をふるまってくれるはずの奥さま(ひろみさん)の姿が見えない。
「去年の6月、70歳で先立ってしまいました。最初は股関節に痛みがあって、それでも病院から大丈夫と言われて安心していました。ある日、『頭が割れそうに痛い』と言ってそれっきり。店は彼女が主力でやってましたから大きな痛手です」
明るい性格のひろみさん目当ての常連客も多かったようだ。

















