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森岡英樹経済ジャーナリスト

1957年生まれ。早稲田大学卒業後、 経済記者となる。1997年、米コンサルタント会社「グリニッチ・ アソシエイト」のシニア・リサーチ・アソシエイト。並びに「パラゲイト ・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年にジャーナリストとして独立。

相続で過度な節税対策は逆効果…かえって課税額が増えるケースも

公開日: 更新日:

 だが、この純資産評価方式で算出された場合、一般的に評価額が高くなり、多額の相続税が課されてしまう。このため銀行や税理士は、「純資産評価方式の対象企業から外れるよう、決算期を変
更したり、無配であれば配当を行うなどの対策を提案するのが常套手段になっている」(同信託銀行幹部)という。

 しかし、その節税対策が行き過ぎと判断された場合には、企業価値評価ガイドラインに基づき、「時価純資産法」で厳しく課税されるケースがあるという。

 この2つのケースは、いずれも納税側が不服として裁判で争われたが、納税者側が敗訴している。特に後者の事業承継のケースでは、対策前の評価額が約34億円であったのに対し、課税当局が算定した評価額は約40億円と上回った。納税者側は国税不服審判所に審判請求したが、棄却されている。「節税対策を講じたために、課税額が増える逆効果となった珍しいケース」(同メガバンク幹部)とされる。

 ただ、合法的な「節税」がどこまで許されるのか、その線引きはまだ明確ではない。「節税後の課税評価額が、課税当局が算定する時価の半分を下回るかどうかが一つの目安になるのではないか」(同信託銀行幹部)との見方もあるが、定まったものではない。

 相続・事業承継ビジネスが盛り上がる中、課税当局が、過度な節税対策が横行することに警鐘を鳴らしていることに留意する必要がありそうだ。

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