J1最多得点に王手 広島FW佐藤寿人が語る「ゴールの極意」

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――W杯2次予選の初戦シンガポール戦でまさかのスコアレスドロー決着でした。8月の東アジア杯は2分け1敗(北朝鮮1―2、韓国1―1、中国1―1)に終わり、初の最下位という屈辱でした。改めて日本代表の決定力不足が浮き彫りとなりました。

「シンガポール戦に関しては、決定力不足と言っても差し支えないと思います。欧州組の攻撃陣も合流しながら、ゴールが決まってもおかしくない場面は少なくありませんでしたから。東アジア杯の場合《チャンスが少な過ぎた》と言えるでしょう。その原因は何か? ボク自身の印象ですが、所属クラブでプレーしているポジションと違った役割を与えられている選手がいたと思います」

――その「違った役割」の具体例を教えて下さい。

「たとえば名古屋FWの川又選手です。Jリーグで対戦していて《ゴールに直結するプレーが素晴らしい》と感じていました。いつもはペナルティーエリア内で《ゴールを陥れる雰囲気を発散させている》選手が、東アジア杯では下がってボールを受けて攻撃の起点になったり、いつもの川又選手らしさが見られなかった。2列目で相手ゴールに背を向けてボールを受け、味方に預けてから相手ゴールに行こうと思っても、その時には肉体的にも精神的にも疲弊してガス欠状態でした。彼はボクと同じタイプ。フィニッシャーだと思っています。身長があり、フィジカルが強いということでポストプレーをやらされたのでしょうが、テレビで観戦しながら《もっとできる選手なのに》と思っていました」

――Jリーグでゴールを量産しながら、日本代表に招集されることが少なかったのは、何が原因だったのでしょうか?

「日本代表に呼ばれてデビューしたのはドイツW杯の4カ月前。ジーコ監督時代の06年2月の米国戦でした。この米国戦から、ドイツW杯メンバー発表までの7試合のうち6試合に出場し、2得点を挙げることができました。W杯メンバーには入れませんでしたが、ジーコ監督からは『ゴールを決めてこい』と送り出され、フィニッシャーとして期待されていることを実感していました。しかし、オシム監督、岡田監督時代には、得点以外の《サイドでの上下動》なども求められました。ボク自身、指揮官にアピールするという点で物足りなかったと思います」

――フィジカルもプレースタイルも似たタイプのFW岡崎が、日本代表主戦FWとして多くのゴール(8日のW杯予選アフガニスタン戦の2ゴールを加えて通算46得点)を決めていますが、佐藤選手もチャンスを与えられていたら、同程度の活躍はできていた。そう話す人は少なくありません。

「代表出場31試合で4得点。先発出場は2試合だけです。正直、消化不良の思いもありますが、やはり《自分には“何か”が足りなかった》のでしょう。短い出場時間とはいえ、結果を残せなかったのも事実ですし。岡崎選手は、ゴールに至るまでのイメージが、ボクと似ていると思います。でも、彼にはボクにはない武器があります。チームのために走り回り、守備にも精を出す。本当に素晴らしいと思います」

――日本代表の決定力不足をどう解消するか、ヒントを教えて下さい。

「代表4得点のボクに言えるようなことはありませんが(笑い)。もっとストライカー然としたFWが出てきて欲しいし、育成していくべきだと思います。絶対にゴールを奪ってやる! と目をギラギラさせたFWの出現を心待ちにしています」(つづく)
▼連載第2回は24日(木曜日)発売号に掲載

▽さとう・ひさと 1982年3月12日生まれ。埼玉県出身。身長170センチ、体重71キロ。6歳でサッカーを始め、ジェフ千葉ユースから2000年に千葉とプロ契約。C大阪、仙台を経て05年から広島でプレー。U―16から各年代の代表に選ばれ、06年2月のアメリカ戦で日本代表デビュー。通算31試合・4得点。12年クラブW杯に出場して3得点。モンテレイ(メキシコ)のFWデルガドと並んで得点王。12年J1得点王(22点)。元日本代表MF佐藤勇人(千葉)は二卵性双生児の実兄。14年川崎戦で右足トラップから時計回りに反転しながら左足でループシュートを決めて「FIFAプスカシュ賞(年間最優秀ゴール賞)」にノミネートされた。

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