コロナ禍が錦織圭の致命傷に…長期実戦離れの深刻ダメージ

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 昨年の全米オープンテニス(8月26日~9月8日)を最後に、実戦から遠ざかっているのが錦織圭(30=世界ランク31位)だ。

 10月22日に右肘を手術。当初は今年3月のマイアミ・オープン(マスターズ1000)での復帰を目指していたものの、年が明けてもサーブの練習すらできない状態で方針を変更。3月6、7日には神戸のデ杯に顔見せで参加。4月の欧州のクレーコートシーズンから徐々に復帰し、昨年、8強入りした全英と全仏を目標にするつもりだった。

 ところが、折からの新型コロナウイルス禍はテニス界も直撃。3月以降、すでに30を超す公式大会がキャンセルされ、7月13日までのシーズン中断を決めている。今回のコロナ禍は錦織にどう影響するか。

■右肘回復のメリットより大きいマイナス面

 錦織は故障からの復帰が遅れたため、仮にシーズンが続いていたとしても、目標の全英や全仏は苦戦を余儀なくされただろう。昨年は全英と全仏で計720ポイント稼いでいるだけに、これを落とすとランキングは一気に90位前後まで下がってしまう計算だ。ツアー中断で、そうならないうえに、右肘のリハビリにとってもプラスではないのか。

「右肘の回復が遅れた錦織にとって、コロナ禍によるツアー中断は短期的にはラッキーに見えますが、大きなダメージでしょう」と言うのはスポーツライターの武田薫氏だ。

「全米から2カ月近く様子を見て、最終的に手術に踏み切ったのは、昨年暮れに30歳を迎える年齢を考えてのこと。1990年代までのテニス界で30歳は年齢的な限界でしたが、現在は競技年齢が延びた。まして技巧派の錦織は35歳まで、あと5年間は一線で戦えると見越して手術を決断したのでしょう。その5年のうちの1年を棒に振るのはいかにも痛い。休養は肉体的にはプラスになっても、ツアーはメンタリティーが支配する世界です。年齢が進むほど衰えるし、モチベーションの構築には苦労しますよ」

 右肘の回復以上に、長期にわたって実戦を離れる精神面のダメージが大きいというのだ。

「錦織の念願はメジャータイトルの獲得ですから、1年のブランクは4度のチャンスを失うことになります。あのフェデラーですら28歳からほぼ7年間、グランドスラムは1度しか優勝できませんでした。こうした状況を突破するには緻密なチーム体制が必要ですが、錦織はこれまで2010年から個人コーチを務めたダンテ・ボッティーニとの友情だけで戦ってきたような印象がある。右肘を手術する直前にダンテとの契約を打ち切りましたが、後任のマックス・ミルニーは錦織の活動拠点であるIMGアカデミーの専属コーチ。“とりあえず感”は拭えません」(武田氏)

テニス界の現状もマイナスに

 来年に延期された東京五輪も足かせになる。もともとテニスやゴルフはツアーと五輪の両立が難しい。五輪に参加すれば日程的にも肉体的にも負担が大きいからだ。トップクラスの多くはツアー優先。錦織は結果として銅メダルを獲得した前回のリオ五輪にしても、参加に消極的だった。今年は東京開催に加え、故障もあって目標に掲げていた。現時点で来年の目標とは公言してはいないものの、スポーツマスコミは参加をあおるに決まっているし、1年延期したからやめますというわけにはいかないだろう。リオですら出た錦織に、地元開催の五輪を捨ててツアー専念を表明する勇気はなさそうなのだ。

 テニス界の現状もマイナスに作用しそうだ。前出の武田氏がこう言った。

「現在、世界ランキングトップ10のうち、半数の5人までは26歳以下の選手が占めています。コロナ禍で中断するまでのツアーの流れはティエム(26=世界ランク3位)を中心にメドベージェフ(24=同5位)、ルブレフ(22=同14位)、ハチャノフ(24=同15位)のロシアの若手トリオ、チチパス(21=同6位)、ズベレフ(23=同7位)、シャポバロフ(21=同16位)、アリアシム(19=同20位)らが攻め上がり、ジョコビッチ(33=同1位)、ナダル(33=同2位)、フェデラー(38=同4位)の3強の壁を崩しかけていた。中断で下克上の出はなをくじかれた格好とはいえ、若手の回復力は早い。ツアー再開とともに一気に逆転という事態も考えられます」

 伸び盛りの若手たちに蹴落とされる可能性もあるというのだ。ならば錦織は下降線をたどる一方か。今回の中断をプラスに転じるすべはないのか。

「錦織はしがらみなどにとらわれず、すべて自分の思い通りにやるしかないのではないか。恋人と家庭を築くのもよし、オリンピックよりツアーを優先させるのもよし、デ杯や楽天オープンよりもまだ一度もないマスターズ制覇を目標にするのもよし……コーチであるマイケル・チャンとの関係はそのままでも、まだ現役だがフェルナンド・ベルダスコ(36)やファビオ・フォニーニ(32)のような、よりアグレッシブで遠慮なくしゃべるスタッフをボックスに据えて、ガンガン攻めていく体制をつくらないと、コロナの泥沼にズブズブと沈んでしまうのではないか。結果さえ出せば、いや、結果が出なかったとしても、だれも文句は言いませんよ」(武田氏)

 思い切った変化、大胆な行動が必要というのだが、30になるまで変わらなかった、いや、変われなかった人間に大きな変化を求めるのは八百屋で魚――という気もしてくるのだ。

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