「野球と暴力」の著者に聞く 安楽パワハラ問題と高校野球強豪校“勝利至上主義”の関係

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済美高の上甲監督は2試合完投指令

 ──安楽が済美高(愛媛)3年時には、2年生部員が1年生の口にカメムシを入れたり、灯油を飲ませようとしたり、日常的な暴力が発覚。部内の悪質なイジメで野球部が1年間の対外試合禁止処分を受けたことがあった。

あの時、安楽は無関係とされましたが、済美が野球部を立ち上げるにあたって宇和島東高から全国制覇の経験のある上甲正典さんというカリスマ監督を呼んできた。勝つための“職業監督”に結果が求められるのは当然で、上甲監督は選手に猛練習を課して急ピッチでチームを強化した。創部3年目の2004年にセンバツで全国制覇を果たしたことで、上甲監督のやり方が正当化された。教育より勝利優先になってしまったところはあるかもしれません」

 ──済美時代、安楽も13年センバツで準優勝などの実績を残した。

「例えば練習試合が2試合あったら、上甲監督に『頼むぞ』と送り出された安楽が2試合とも完投することがあったそうです。そうやって体力や責任感を植え付けて、2年春の甲子園で準優勝と結果も出た。良くも悪くも安楽頼み。『オレが投げなきゃ勝てない』と責任感を持ってマウンドに上がることは、投手として悪いことではありません。ただ、上甲監督に特別扱いされ、高校時代から勘違いしてしまう環境だったのは確かです」

 ──強豪校の勝利至上主義のひずみ?

「同じ愛媛の聖カタリナ学園の野球部寮で部員による集団暴行があり、今裁判をしています。ここも創部5年目で甲子園に出場している。急いで強化すると、その過程でさまざまな問題が生じることは否定できません。松山商などの伝統校なら代々伝わってきたルールがあるでしょうけど、済美や聖カタリナといった新しい学校でも暴力やイジメのような問題が起こる。もし過度な上下関係のある中学年代のチームから持ち込んでいるとしたら、下の世代にまで蔓延する根深い問題だと思います」

 ──日本ハム時代に後輩選手に対して暴力を振るった中田翔(大阪桐蔭出身)もそうだが、甲子園常連校や強豪校に多い?

「勝利を求められれば、練習時間も長くなる。さらに寮生活なら、先輩選手との接触時間も長くなるわけで、そうなりやすい。例えば、来春センバツの21世紀枠の推薦校になっている鹿児島県立鶴丸高では起きにくいでしょう。全国屈指の進学校で練習時間は3時間ほど。暴力やパワハラなんてやっている時間がないからです」

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