米球界の隅々まで根を張る“不文律”は、グラウンド上からプライベートにまで及ぶ
従って、グラウンド内での不文律が破られると、違反した選手だけでなく、しばしばチームの主力選手が報復として相手から死球を受ける。報道陣に同僚や監督を批判した選手が試合に出場できないといったことも、球団内での制裁ということになる。
ただ、かつて球界で違法な薬物や筋肉増強剤が広く使われていた際、受け渡しの場所が「靴を履いた者は入れない」といわれるシャワー室の中であったのは、不文律が悪用された典型例である。
また、2020年にフェルナンド・タティス・ジュニア(パドレス)が八回表に10対3とリード、3ボール0ストライクから満塁本塁打を放った際、監督のジェイス・ティングラーが記者会見でタティス・ジュニアを批判すると、ファンの間から疑問の声が上がった。不文律を守る方が自らのチームの選手よりも大事であるかのような発言は、ファンにとっては時代遅れなものと思われたのだった。
6月16日から19日のドジャース対パドレス戦で大谷翔平やマニー・マチャドなど両チームの主力選手を巻き込む死球や危険な投球が相次いで起きたのも、不文律が今なお健在であることの証拠だ。
何より「あの選手に不文律を教えてやれ」がしばしば「マイナーリーグからやり直せ」の意味で用いられるのだから、書かれざる規則は球界の隅々にまで根を張っていることになる。不文律の問題はこれからも折に触れてわれわれの注目を集めるのである。