「佐保姫」今井絵美子著
おりきが女将を務める品川宿の料理旅籠は、参勤交代の時期を迎え、連日、目の回るような忙しさだ。そんな中、煙管屋の甲本屋から下の娘の「百日(ももか)の祝い」の料理の注文が入る。その日は、伊予宇和島藩で貸し切りだが、おりきは仕出しでもよければと応じる。甲本屋の主人・貴之助によると娘の名は、春の女神「佐保姫」にちなんで「おさお」というらしい。妻のお延がおさおをはらんだとき、貴之助は上の娘の三味線の師匠・汀にぞっこんだった。婿養子の貴之助は、家を出て汀と共に生きる決意まで固めていたが、お延から子供を授かったと聞き、踏みとどまったのだ。(表題作)
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