“愚衆民主主義”とまで揶揄されるデモクラシーの未来とは

公開日: 更新日:

「迷走する民主主義」森政稔著

 公徳心のかけらもなさそうな人間ばかりが目立つ昨今。大衆を通り越して“愚衆民主主義”とまで揶揄(やゆ)されるデモクラシーとは?

 2009年、日本の戦後史を根底から変えると期待された政権交代は、その後の民主党政権の体たらくであっけなく崩れた。それにつれて民主主義そのものへの疑いも急速に強まったのだ。

 東大で政治思想を講じる著者は、新自由主義にシフトした小泉政権以来の自民党政治に対する批判者としての民主党に期待したが、そのマニフェストや政策と権力についての考え方に疑問を持ち、メディアや世論のお祭り騒ぎはかえって害になると感じたという。そこで批判の書として書き始めたのが本書だ。

 ところが当の政権があっけなく倒壊。しかし、安倍政権になると「戦後政治の清算」とか「民意を背景にした強いリーダーシップ」などという掛け声の下でむしろ問題点が強まった、という。つまり、著者の見方では民主党と現在の自民党はいわば地続きなのだ。プラトンに始まる民主政批判、フランスの共和政ナショナリストによる(アメリカ的)民主政批判、新自由主義のもとで資本主義に従属を余儀なくされた民主主義の問題点などが次々に論じられるが、よくこなれた議論で過度の難解さはない。

「私的利益を追求する消費資本主義」に鼻面を引きずり回された民主主義に未来はあるのか。(筑摩書房 1000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に