怖い話で思い切りヒンヤリ ちょっと早い「怪談本特集」

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「招かざる客」木原浩勝著

 この世のモノではないものと遭遇するのは何も墓場や夜などに限らない。日常のほんの少しの隙間に垣間見た「なんだ、アレ……」的なものほど、人の肝を冷やすものはない。本書は、怪談作品には定評のある著者によるそんな遭遇話21話。

 たとえば、「再婚」では嫉妬深い男の霊が登場する。死ぬ間際、妻に「俺が死んでも再婚しないでくれよ」と言い残していた夫が、一度結婚に失敗した娘が再婚することになったとき姿を見せて再婚を阻止しようとした。「お母さんに言ったんじゃなかったの? お父さんは関係ないでしょ!」とキレた娘は、実家の母親と共に父の仏壇に向かって猛抗議。すると位牌の下に小さな水たまりが出来た。どうやら父親が泣いたらしい。

 もう死んでしまったけれどかつて知っていた「その人」を見たとき、誰もが驚き、信じられないといい、否定したい思いにかられる。けれど、そんなあの世とかかわったとき、なぜだか温かな気持ちになることを本書は教えてくれる。(講談社 1200円+税)

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